【12月12日 東方新報】東アジア屈指の観光都市・マカオが(Macau)に観光客が戻りつつある。新型コロナウイルスへの初期対応が成功し、死者はゼロ。中国本土向けのマカオ版「Go Toトラベル」も展開している。ただ、観光客はほとんど本土からの観光客に限られており、全面回復までハードルがある。

 JR山手線の内側の半分程度(面積約32平方キロ)に約68万人が住み、人口密度は東京の3倍に達するマカオ。街自体が「三密」のようなマカオだが、コロナ禍に対しては初期の封じ込め策が功を奏した。感染者46人はすべて輸入型感染で、水際対策により市内の発生はゼロに抑えている。46人の患者も退院し、入院患者も死者もゼロだ。国際観光都市としての責任や、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)を封じ込めた経験もいかした。

 コロナ禍を克服したことから、マカオでは8月から、1週間以内の陰性証明書などを用意する条件で、お隣の広東省(Guangdong)住民の観光を認めた。さらに9月からは中国全土からの入境を認めた。マカオ特区政府は9月1日から12月31日まで、中国本土の観光客を呼び込むため、2億9000万パタカ(約37億円)分のクーポン券を配布。飛行機チケットやホテルの割引に使えるマカオ版「Go Toトラベル」を実施している。

 マカオ政府観光局の文綺華(Wen Qihua)局長は「1日200人前後だった観光客は現在2万~2万5000人に回復した。ホテルの回転率は10%未満から30~40%に上がった」と説明。「今後最も重要なのは、マカオに対して観光客に『安心感』を持ってもらうことだ」と強調した。マカオが「日常」を取り戻したことが浸透するかどうかが、観光客の増加を左右するという。11月下旬には恒例のマカオグランプリが開催。市街地の公道で迫力あるレースが展開された。同じ下旬には卓球WTT(World Table Tennis)マカオ大会も開かれた。

 しかし、2019年の観光客3900万人と比べると、完全復活への道のりはまだ程遠い。特に、カジノ産業への打撃は大きい。4月から9月までのカジノ収入は前年比90%以上に落ち込んだ。カジノからの税収はマカオ政府の歳入のほぼ半分を占め、マカオの勤労者のうち4分の3はカジノ業界に関連した仕事に従事している。このため、外国からの観光客受け入れ再開も待ち望まれる。何より、観光客がカジノで楽しむ心理になるためには、世界的なコロナ禍の克服が必要となるだろう。(c)東方新報/AFPBB News