【12月8日 People’s Daily】「わしは人生で2回引っ越し、3つの家があるんだ」。中国チベット自治区(Tibet Autonomous Region)ラサ市(Lhasa)から南に位置するゴンカル県センブリ村に住む高齢者のバイマさんはそう振り返る。2度の引っ越しはいずれも暮らしの変化や環境保護の流れに関係しており、時代の変遷を象徴している。

 最初の引っ越しは1970年代。当時、バイマさんの家はラサ市の北東にあるナクチュ市シェンザ県にあり、牛や羊を飼っていた。牧畜により草地が荒れ地になるのを防ぐため、2053人の牧畜民は16万頭の家畜とともに、当時は無人だった羌塘草原に移り住んだ。草原の面積は広く、飼育空間が広がったことでバイマさんらの生活は改善された。

 だが、やはり同じ問題が発生した。チベット高原の自然は緩やかに成長するため牧畜が拡大するペースに追いつかず、草原がまた荒れ果てる危険に直面した。そこでバイマさんと村人たちは、牧畜業以外の仕事もあり、住居環境が安定しているセンブリ村に移り住んだ。新しい仕事、新しい暮らしの中で、未来への希望が満ちあふれていた。

 1回目の引っ越しは、人々が草原に入り環境を悪化させた。2回目の引っ越しは、人々が草原を離れ自然を回復させた。食べ物も水もすべて自然頼みで環境を使い尽くすような暮らしから、「緑の山は金銀財宝のような宝物」という意識に代わり、暮らしと環境の調和を図るようになった。自然を大切にし、限られた資源を有効に使うことで、将来の世代が「緑の配当」を受けることができる。

 バイマさんは今、住宅や給水が保障された生活を送っている。太陽の暖かい日差しに包まれながらのんびりとお茶を飲み、静かな老後を楽しんでいる。彼がかつて住んでいた羌塘草原は、チベットカモシカやアオヒツジなどの野生動物が人間におびえることなく暮らせる楽園となっている。

 中国政府の第13次5か年計画(2016~2020年)において環境保護は大きな政策の柱となり、大きな成果を収めた。2021年からの第14次5か年計画においても環境保護の方針は変わらない。人々と自然の共存。それこそが、14億人の国民に豊かな暮らしをもたらすことにつながる。(c)People's Daily/AFPBB News