【1月3日 AFP】毎年冬になると、ロリーナ・スタピット(Lorina Sthapit)さん(32)といとこたちは、祖母が編んでくれた新しい毛糸の靴下で足を温める。

 戸棚に積み上がった明るい配色の靴下を見て、スタピットさんはそれを世界の人々ともシェアしようと思い付き、手工芸品のベンチャー事業を共同で立ち上げた。そして手作りの品々を販売するだけでなく、その主な作り手である高齢の女性たちのめったに語られることのない人生についても、掘り下げて紹介している。

「一つ一つの作品に物語があり、歴史的、文化的な価値がある。私たちは、その伝統や技術を未来に向けて生かし続けたいのです」とスタピットさんはAFPに語った。

「彼女たちは、ほとんどの物を店で買わずに手作りする時代に育った。だからこの世代の人たちは、驚くほど豊かなスキルと経験を持っています」

 2018年、スタピットさんは妹のイリナさん夫婦と一緒に、「おばあちゃん」を意味する「アジ」から名付けた「アジズ(Aji's)」を起業。ニットウエアや毛布、ジュエリーなどさまざまな手工芸品を販売している。

 また、アジズでは、ポッドキャストやブログを通じて、高齢の作り手たちの人生をスタピットさんをはじめとする孫たちが紹介し、聴き手や読み手を郷愁の旅に誘う。

 わずか8歳での結婚、教育を受けるための闘い、家父長制社会でシングルマザーとして5人の子どもを育てたことといった人生の物語は、ネパールの社会や文化の豊かな歴史だけではなく、厳然と男女格差のある社会秩序にもスポットライトを当てている。(c)AFP/Paavan MATHEMA