【12月7日 People’s Daily】中国では今、SFをテーマにした映画やゲーム、小説が人気となっている。2019年のSF市場規模は658.7億元(約1兆539億円)。2018年の456.3億元(約7300億円)と比べて44%増という驚異的な拡大ぶりだ。輸入市場だったSF産業は今や国産が中心となってきている。11月に北京で行われた「2020年中国SF大会」は中国のSF熱をそのまま表していた。

「科学の夢、未来の創造」をテーマにしたSF大会は、中国科学技術協会(CAST)と北京市が共同開催。先端技術をいかしたテーマ別の展示や著名人らのフォーラムが行われた。

 複数の世界が同時並行に存在する「パラレルワールド」をテーマにした会場では、人工知能(AI)や5G技術を駆使してパラレルワールドの世界を表現。バーチャルリアリティー(VR、仮想現実)の体験コーナーでは、来場者が特殊ゴーグルを装着してVR空間を五感で体験した。ハリウッド映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」に登場するタイムマシン「デロリアン号」のレプリカも登場するなど、有名SF映画にまつわる展示が数多くあった。ロボットと来場者が楽しく交流するイベントもあり、来場者たちは参加型の空間に心をわしづかみされていた。

 また、2019年に中国のSF映画として初の大ヒット作品となった「流浪地球(流転の地球)」の設計ボードの原図も展示。映画制作の舞台裏を明かすエピソードも数多く紹介された。中国だけでなく日本など海外でも人気を集めたSF小説「三体」の世界を100人の著名画家・イラストレーターが描いた作品が展示された。

 会場では「中国SF産業リポート」も発表された。2019年の市場規模658.7億元のうち、売り上げの主力は映画とゲームが占めた。特にゲームの売り上げは430億元(約6880億円)に上り、今年は上半期で220億元(約3520億円)を突破。その潜在力はすさまじい。中国科学技術協会の懐進鵬(Huai Jinpeng)常務副主席は「この数年、中国のSF産業の発展はめまぐるしい。SFというソフトパワーは今や、技術革新や社会の進歩を生み出すきっかけとなっており、不可欠な存在となっている」と話す。

 SF産業の熱気を支えるため、北京市は郊外の石景山区に5000万元(約8億円)を投入してSF産業の拠点をつくる。映画やゲームの制作、最新デジタル映像技術の開発などのほか、新たな人材育成に力を入れていく。SFは中国の社会、経済、文化に新たな活力をもたらす分野となっている。(c)People's Daily/AFPBB News