■住民の懸念に応じていないとの批判も

 今年は新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的に旅行の動きが止まり、エジプトを訪れる観光客数はますます減少した。

 プロジェクトが観光客を呼び戻す策になると見る向きもある一方で、シワに住む3万人のベルベル人が抱える懸念には対処できていないとの批判もある。

 この辺りで、「シャリに行くシワの人はいない。われわれはシャリを慕っているが、離れた場所から、景色のようにだ」とフウェイティさんは指摘する。

 ボロボロになった危険な道路の修繕や、地元経済の要であるオリーブやナツメヤシの栽培に害を及ぼす農業廃水の処理など、住民にはもっと差し迫った問題がある。

 ハリド・アナ二(Khaled al-Anani)観光・考古相はシャリ要塞の修復完了を祝う式典で、この要塞は「文化財」であり、修復は「絶対に必要」だったと述べた。

 一方で、空港や特に道路といったインフラ整備にも取り組む必要があることも認めた。

 それでも懐疑的な住民もいる。

 フウェイティさんは「要塞が崩壊するおそれはなかった」と指摘し、「要塞はそのまま残しておいた方が良かっただろうと思う。これらの遺跡には歴史がある」と語った。(c)AFP/Hager Harabech