【12月5日 AFP】ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)政権は、人工衛星や次世代通信規格「5G」を含む無線技術に特化した国内企業が中国の国有軍需企業に買収されるのを阻止した。安全保障への重大なリスクのためとしている。独メディアが3日、報じた。

 DPA通信は独政府の文書を引用し、中国航天科工集団(China Aerospace Science and Industry Corporation)の子会社、航天工業発展(アドシノ、Addsino)の買収対象となったのは、ノルトライン・ウェストファーレン(North Rhine-Westphalia)州に拠点を置く企業、IMSTだと報じている。航天工業発展は、軍用通信システムを製造している。

 経済省は、メルケル政権が2日、外国企業による買収を阻止することで合意したと認めたが、当該企業の名前は明らかにしていない。

 DPA通信の報道によれば、メルケル政権は、今回の買収計画には「実際に重大なリスク」が生じ得ると判断した。

 IMSTは、地球観測衛星「テラサーエックス(TerraSAR-X)」の主要部品を開発している。同衛星のデータは、独防衛省のシミュレーションや兵器システムに使用する3Dモデルの構築に利用されている。DPA通信が引用した文書は、「買収を禁じなければ、こうしたノウハウが中国に流出し、中国の軍備に活用されることになる」としている。

 IMSTは5G技術の開発にも携わっており、中国の軍需企業の傘下になった場合、ドイツ政府の信頼できるパートナーとみなすことはできなくなる。(c)AFP