マイナーチェンジとしてはかなり大規模な変更を受けた新型Eクラス。ヘッドライトをはじめ、多くの部分を刷新した外観だけでなく、走りの面でも熟成が図られるなど、中身の進化も著しいものだった。
近年のメルセデス・ベンツはモデルライフの折り返し地点でフェイスリフトの枠を超えた大掛かりな変更を施すのが、もはや通例。発売から4年を経て初のマイナーチェンジを受けた新型Eクラスも、例に漏れず大幅な刷新を受けての登場となった。
まず顔つきからして、ずいぶん雰囲気が変わった。切れ上がったデザインのヘッドライト、下方に広がる台形のラジエーター・グリルを得て、俄然主張の強いものになった。セダンは横長のテールライトを採用するなどリアまわりも一新されている。一部を除いてスポーツ・トリムが標準になり、AMGライン・エクステリアも備わる。
ここまで変える必要があったのだろうか? と思うのは割と一瞬で、すぐに見慣れて、そして従来モデルが古く見えてきた。つまり必要あるいは効果はあるのだ。
内装ではステアリング・ホイールが刷新された。デザインが新しくなっただけでなく、保舵の検知に静電容量式タッチ・センサーが用いられ、オート・クルーズコントロール使用時に常にトルクをかけておく必要がなくなったのがポイント。使い勝手が格段に高まった。
Eクラスには初搭載となるインフォテインメント・システムMBUXには、ジェスチャー・コントロール機能も備わる。カメラ画像に案内表示を重ねて映すARナビゲーションも採用されるなど、先進装備も一層の充実が図られた。
試乗したのはセダン、ワゴンのいずれもE200スポーツ。昨年の小改良で搭載された1.5リッターターボ+BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)を搭載する。
Eクラスに過給器付きとはいえ1.5リッターではいかにも物足りなさそうだが、最高出力184psを発生するために大きめのターボチャージャーを使っているにもかかわらず、出足はむしろ力強さを感じるほどだ。これこそ38Nmという大トルクを供給するBSGの威力である。
同じ1.5リッターターボ+BSGのC200では回生との協調がうまく行っておらず違和感のあったブレーキ・フィールも改善されて、自然な感覚で走れる。結果として動力性能には、まったく不満を覚えなかった。
19インチ、しかもランフラットのタイヤを履くということで心配した乗り心地も、むしろ柔らかさが増していて非常に快適だ。タイヤが起因のザラつきはわずかに残るが、他のタイヤに履き替えようと思うほどではない。
見た目は正直、好き嫌いが分かれそうだが、中身の進化は想像以上。装備の充実ぶりにも驚くが、何より走りの熟成度に感心させられた。変化の早い今の時代、このぐらいの大幅刷新はやはり必要なのである。
文=島下泰久 写真=小林俊樹
(ENGINE2021年1月号)
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