【12月5日 東方新報】世界を席巻したコロナ禍は、中日両国のハイレベル対話を1年近く停止させたが、国際情勢の変化のスピードを遅らせることはできなかった。東京五輪の延期、日本の内閣交代、アメリカ大統領選挙の浮き沈みなど、不安定な中日関係をさらに動揺させた。

 東洋学園大学(Toyo Gakuen University)の朱建栄(Zhu Jianrong)教授は、この時期に中国の国務委員兼外交部長・王毅(Wang Yi)氏による2日間(11月24日、25日)の訪日は、非常に重要だと考えている。今回の訪問により、中日関係のさまざまなマイナス要因が排除され、関係悪化の傾向に歯止めをかけるため、多くの理解を醸成した。

 北東アジアの国際関係と中国外交の研究に長年専念してきた朱氏の指摘によると、ここ数年、中日両国の間に経済的、文化的、人的交流が頻繁に行われ、特にコロナ禍後の相互支援は、両国の国民感情を改善するために一定の役割を果たした。しかし、中国の経済規模が日本より大きくなった以降、日本メディアや一部のエリート層の中に中国に対する不満が蓄積されていることも事実だ。

 ここ数年の米中対立に伴い、日本国内で米国と組んで中国を封じ込める時が来たと考える人も少なくない。釣魚島(尖閣諸島、Diaoyu Islands)問題で挑発行動を繰り返していることはその心理の現れといえる。王毅氏は今回の来日で、うわべだけの言葉を口にしたり、鋭い問題を避けたりすることなく、両国の対立を率直に日本社会に語ったことは、非常に称賛すべきことだという。

 朱氏は特に、日本のメディアの釣魚島に関する報道は、いつも不正確な情報を流れていると強調した。例えば、釣魚島周辺の12海里以内の海域は潮流が速く、漁業には適していないことについて触れないことだ。釣魚島の近くに出没する日本漁船のほとんどは活動家が政治目的のためにチャーターしたものである。王毅氏は、両国の外相の合同記者会見でこの問題を指摘し、釣魚島問題に関する両国の4点合意に基づいて、東シナ海(ひがししなかい)を平和、協力、友好の海に構築したいとの希望を表明した。 困難を乗り越えようとする前向きな対応は、今回、王毅訪日のハイライトの一つといえる。 長年合意されていたにもかかわらず実施されなかった海空連絡メカニズムが明確に実施されたことは、王毅氏の訪問が成果を上げたことを証明している。

 この他、王毅氏は、両国間の必要な人事交流ための「ビジネストラック」を開始し、今月中に中日の食品・農業・漁業分野での協力のための協議メカニズムを構築することで合意した。朱氏は、今回の王毅氏の訪問は、率直で積極的な交流を通じて中日関係の悪化傾向を効果的に抑制し、中日両国の関係発展の転機となったと解説した。(c)東方新報/AFPBB News