【12月4日 AFP】サルの脳に電極の付いたインプラントを埋め込み、網膜を通さずに人工的に誘発させた高解像度のパターンを脳内で直接認識させることに成功したと、オランダ神経科学研究所(NIN)のチームが3日、米科学誌サイエンス(Science)に発表した。目の見えない人の視力を取り戻す技術の実現に、また一歩近づいた。

 この技術は、パソコン画面上の小さな点の集まりを画像として認識するように、脳に電気的な刺激を与えて発生させた「眼内閃光(せんこう)」という小さな光点を「見る」という数十年来のアイデアに基づいている。

 NINのピーテル・ルールフセマ(Pieter Roelfsema)所長率いる研究チームは、1024個の電極を持つインプラントを開発し、これまでにない高解像度を実現した。電極の数も解像度の高さも、前例のないレベルだとしている。

 このインプラントを脳の後頭葉にある視覚野に埋め込んだサル2匹は、アルファベットなどの文字や線、動く点などの形を認識した。

 これらのパターンはモノクロで、実際の視力に比べればまだ粗いが、これまで開発されたインプラントの性能からは大きな飛躍となる。

 視力を失った人の目の機能を補う人工視覚装置は、カメラや眼鏡などの形で実現するかもしれない。人工知能(AI)が捉えた画像をパターン化し、装着者の脳に送る仕組みだ。こうした技術は、テレビシリーズ「新スター・トレック(Star Trek: The Next Generation)」の登場人物ジョーディ・ラフォージ(Geordi La Forge)が装着するバイザーなど、サイエンスフィクション(SF)作品に登場している。

 研究チームは、人間用の装置を3年以内に開発することを目指している。ただ、現在の電極は埋め込んでから1年で針の周囲に細胞組織が生成されてしまい、機能しなくなるため、ルールフセマ氏は「人体により適した新型の電極を開発したい」と語っている。(c)AFP/Issam AHMED