【12月2日 AFP】ゆで卵をソーセージミートで包み、パン粉をまぶして揚げたスコッチエッグは、英国のパブでおなじみの料理だ。同国では現在、この料理は果たして「ちゃんとした食事」か否かという論争が巻き起こり、政府の対新型コロナウイルス感染症(COVID-19)政策に亀裂が入りかねない事態に発展している。

 英国では新型コロナ流行に関する警戒レベルが3段階に分けられており、イングランドのレベルは、2日から中程度の「ティア2」に引き下げられる。これに伴い規制が緩和され、パブなど飲食店は午後11時まで営業できるが、酒類は「ちゃんとした食事」と一緒に提供しなければならない。

 規制緩和を前にここ数日、スコッチエッグが「ちゃんとした食事」なのかどうかという論争が起こっている。グルメで有名な他の国ならばいざ知らず、英国のパブの客たちは、ビールを飲みながらポテトチップやポーク・スクラッチング(豚の皮を揚げたスナック)をつまむことを「夕食」と考えている。

 英環境相のジョージ・ユースティス(George Eustice)氏は11月30日、スコッチエッグは「テーブルサービスがあれば」食事に当たるとし、パブ業界ではそう広く認識されていると述べた。

 だが翌日、マイケル・ゴーブ(Michael Gove)内閣府担当閣外大臣はこれに水を差すように、ピクルスを添えて提供されるような「スコッチエッグ数個」は前菜であり、実質的にメインとなる料理ではないとの見解を示した。

 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)をめぐる最終段階の交渉と、新型コロナ流行による経済的混乱への対応に奔走するボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相も、この論争に巻き込まれた。

 同氏の報道官は、バーの軽食はちゃんとした食事とはみなされないが、サービス業界ではそのような慣行になっていると述べた。

 数週間前にもコーニッシュパスティと呼ばれるパイのような料理やピザをめぐって同様の論争があり、同報道官はややうんざりした様子だった。

 世論は、スコッチエッグは単なる軽食だという意見でおおむねまとまっているようだ。

 英調査会社サバンタ・コムレス(Savanta Comres)が行った世論調査では、スコッチエッグを「ちゃんとした食事」だとした人はわずか21%で、フライドポテト(34%)やスープ(39%)を下回った。

 一方、牛肉とヨークシャープディング、ジャガイモなど野菜のローストにグレービーソースがかかったもう一つのパブの定番メニュー「サンデーロースト」については、83%が「ちゃんとした食事」だと答えている。

 パブの軽食を食事とみなすかどうかをめぐる論争の背後には、深刻な問題がある。政府は濃厚接触による新型コロナの感染拡大を防ぐために、大勢の人が集まり飲酒する機会をなくしたいと思っている。一方、新型コロナ関連のロックダウン(都市封鎖)で大きな打撃を受けたパブは営業再開を待ち望んでいた。(c)AFP/Stuart GRAHAM