【12月11日 AFP】質素なラジオ局のスタジオで、シェリン・モハンマド(Sherin Mohammad)さん(31)がマイクに向かって語り掛け、生放送でニュースを伝える。ここはごく一般的なラジオ局ではない──「ガルデニアFM(Gardenya FM)」はシリア難民による、シリア難民のためのラジオ局だ。

 ニュースとトークショーでプログラムを構成するガルデニアFMは、イラク北東部アルバット(Arbat)の難民キャンプで、隣国シリアから来た人々によって番組が制作されている。

 ニュースを伝え終わったシェリンさんは、番組を締めくくるテーマソングが流れるのを待ってから、大きなヘッドホンを机に置いた。シェリンさんの故郷の町は、ここから500キロ近く離れたシリアのカミシリ(Qamishli)だ。

 2014年、シェリンさんは夫と共にカミシリを離れた。夫は当時、シリアの徴兵制度を回避するすべを懸命に模索していた。

 故郷からの移動は2人にとってつらいものとなったが、いいこともあった。ジャーナリストになるというシェリンさんの長年の夢がかなったのだ。

 キャンプではシリア内戦についての情報提供に注力してきた。シリア内戦は、2011年にバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領政権への抗議デモが広がったことをきっかけに始まった。

 対抗する勢力同士が情報の捏造(ねつぞう)をめぐって非難合戦を繰り広げるなか、シリア国内外のコミュニティーでは、深刻な分断が起きている。

 シェリンさんが望むのは、その「解毒剤」になることだ。

「だれもがスマートフォンを持っていて、シリアに関する古い情報を得ることができる」とシェリンさん。「政権が拡散する偽ニュースも含めて」