【11月30日 AFP】スイスの暗号機器メーカーを米中央情報局(CIA)とドイツの情報機関が秘密裏に所有して各国政府の極秘通信内容を収集していたとされる問題で、別のスイス企業も米独のスパイ活動に利用されていたとする調査報道番組が放送され、スイス政界を揺るがしている。

 スイスでは今年2月、暗号機器メーカーのクリプト(Crypto)を米独情報機関が共謀して利用し、長年にわたって改変した暗号機器を各国政府に販売して極秘通信の内容を抜き取っていたことが明らかになっており、2社目の疑惑浮上に議員らは怒りをあらわにしている。

 新たな疑惑は25日、スイス公共放送のドイツ語局SRFが報じた。調査報道番組「ルントシャウ(Rundschau)」によれば、クリプトより小規模な暗号機器メーカー、オムニセック(Omnisec)も同様に利用され、改変した暗号機器を外国政府や軍に販売していたという。

 オムニセックは、暗号機器を製造していたスイスのグレタグ(Gretag)から1987年に分離した企業で、2年前に操業を停止するまで音声やファクス、データの暗号化装置を世界各国の政府機関に販売していた。

 社会民主党のセドリック・ウェルムート(Cedric Wermuth)共同代表は26日夜、「中立国をうたうスイスで、なぜこのようなことが起き得るのか」とSRFに疑問を呈し、議会による調査を求めた。

 自由民主党のハンスペーター・ポルトマン(Hans-Peter Portman)議員も、「スイス国内でもスパイ活動が行われているかもしれない。そういう疑念を生じさせる疑惑だ」とSRFに述べ、懸念を表明した。(c)AFP