【12月1日 東方新報】10月下旬に開かれた中国共産党第19期中央委員会第5回総会(5中総会)で策定した第14次5か年計画(2021~25年)の中に、「法定の定年退職の年齢を段階的に実施する」との方針を固め、大きな波紋を広げている。

 中国では公務員や国有企業の職員の退職年齢は男性が60歳、女性は55歳となっている。ほとんどの民間企業もこれに倣って同じ基準にしており、中には女性の定年は50歳と規定する企業も少なくない。

 しかし、男女平等の観点からは「女性の働く権利が奪われている」と批判は以前からあったほか、この基準は新中国建国直後の1950年代に作られたもので、当時の中国人の平均寿命は50歳台であったが、2019年の中国人の平均寿命が77.3歳(中国衛生健康委員会統計)まで伸びたため、定年基準は「時代に合わなくなった」と指摘する声が多い。

 同時に、今の中国は、日本や欧州諸国と同様、少子化の大波が押し寄せている。中国は2016年、長年続けてきた一人っ子政策を廃止し、夫婦が子どもを2人まで持つことが認められた。しかしその後、子供の出生数はほとんど増えていない。2018年以降、出生数は逆に減少傾向に転じた。

 中国の60歳以上の人口は2018年現在、約2億5000万人で、全人口の約18%だが、この比率は今後、少しずつ高まり、2050年には30%を超えることは確実といわれている。

「このままだと年金と社会福祉が維持できなくなる」と懸念する声が高まっている。こうした声を受け、共産党指導部は「定年延長の方針」を固めた。延長方法の具体案は発表されていないが、外国と同様、数年ごとに1歳ずつ定年の年齢を引き上げる経過措置を取る可能性が高いといわれている。

 定年延長の方針決定に対し、中国のインターネットには賛否両論が寄せられている。「年をとっても社会貢献できることはいいことだ」「老後の不安を解消できる」といった賛成の声のほか、「保険料の負担が増える」「孫の面倒を見る人がいなくなる」といった反発の声も寄せられている。

 中国の規定では、定年後すぐに年金の支給が始まるので、定年延長すれば納付期間が長く、もらえる期間が短くなるため、上の世代と比べて不公平感を覚える人が多いようだ。また、多忙の子供のため、孫の世話をする予定の女性から「定年延長したくない」といった声は少なくない。専門家は「都市部の託児所を充実させるなど、政府は定年延長に伴うさまざまな社会変化に対応して、事前に対策をとる必要がある」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News