【11月30日 AFP】フランス・パリで黒人男性が警官から暴行を受けた事件で、予審判事は30日、逮捕された警官4人の予審開始と、うち2人の勾留継続を決定した。司法筋が30日、明らかにした。

 音楽プロデューサーのミシェル・ゼクレー(Michel Zecler)さんが今月初め、スタジオに入ろうとした際に警官3人から数分間にわたって暴行され、人種差別発言を受けた事件は、先週になってニュースサイト「ループサイダー(Loopsider)」に動画が掲載されたことで発覚した。

 フランスではこれを受け、黒人とアラブ系を標的とした警察の構造的人種差別に対する市民の怒りが噴出。勤務中の警官の顔の公開を規制する審議中の新治安法案をめぐる議論も激化している。

 予審判事は、警官4人のうち3人について「公権力を持つ者による意図的な暴力」と「偽装」の容疑で予審を開始すると決定した。残る1人は、催涙ガス缶を放り投げたことをめぐり「意図的な暴力」の容疑で予審対象とされた。また、4人のうち2人は勾留を継続するべきと判断し、残る2人は条件付きでの保釈を認めた。

 これに先立ちパリ検察のレミ・エーツ(Remy Heitz)検事長は、「意図的な暴力」と「虚偽の捜査報告」に加え、特に「人種差別」の容疑で警官らを予審対象とするべきだと主張。また、4人のうち3人は「容疑者が目撃者に接触したり圧力をかけたりするのを防ぐため」勾留を継続するよう求めていた。

 一方でエーツ氏は、後から現場に到着して催涙ガスを使用した警官1人については条件付きで保釈し、「意図的な暴力」のみで訴追されるのが相当との見方を示した。

 エーツ氏によると、事件まで警官4人の勤務態度に問題はなかった。4人は、暴行に及んだのは「恐怖に駆られた」ためだと供述しているという。一方、ゼクレーさんはマスク未着用と強い大麻臭を警官らにとがめられたとされているが、所持品からはわずかな量の大麻しか見つからなかったとエーツ氏は述べた。

 有識者らは、もし勤務中の警官の画像の拡散を規制する治安法案24条が既に成立していたら、今回の動画が明るみに出ることはなかった可能性があると指摘している。(c)AFP/Guillaume DAUDIN, Stuart WILLIAMS