【12月1日 AFP】焼き栗の匂いとグリューワインの湯気、綿雪に覆われた木の小屋から鳴り響く音楽…。ドイツ南部のランツフート(Landshut)で、毎年恒例のクリスマスマーケットが始まっている。だが今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大を防ぐため、この伝統的な光景や香りを楽しめるのは、車の中からだけだ。

 毎晩、日が暮れると数十台の車がドライブイン方式のマーケットに乗り込んでくる。人々は車内でもゆったりとソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)を守っている。

 ゲートを通ると、クリスマスの帽子をかぶりマスクを着けたスタッフがやって来るのを待たなくてはならない。スタッフは車の窓をノックし、クレープやソーセージ、焼き栗などクリスマスマーケットの楽しみが載ったメニューを差し出す。注文を済ませて車を進めると、次の小屋では綿菓子やハート形のジンジャーブレッドといったスイーツを買うことができる。

 飲食店経営者でこのマーケットを組織したパトリック・シュミット(Patrick Schmidt)さん(31)は、「ファストフード店からヒントを得ました」と語る。「今年は困難な状況ですが、クリスマスの雰囲気を少しでも出したかったのです」

 クリスマスマーケットは、商売にとって「難しい時期」を切り抜ける一助になるとシュミットさんはいう。

■数十億円の危機

 新型コロナウイルスの流行第2波と闘うドイツでは、レジャー施設やスポーツ施設が閉鎖を命じられ、レストランやバーでは持ち帰りしかできない。集会やイベントの人数も制限され、国内約3000か所で行われるクリスマスマーケットに大きな打撃を与えている。

 ドイツのクリスマスマーケットは15世紀から続いている風物詩だが、今年は多くの都市が全面的に中止している。

 露天商の協会「BSM」によると毎年、クリスマスマーケットを訪れる人は約1億6000万人に上り、30億~50億ユーロ(約3700億~6200億円)の収益をもたらしている。それだけに中止すれば経済的な損失は大きい。

■車500台のにぎわい

 クリスマスの高揚感と経済的利益を守るために、ドイツ各地の都市では工夫を凝らした取り組みが行われている。

 首都ベルリンのシャルロッテンブルク・ビルマースドルフ(Charlottenburg-Wilmersdorf)地区では、いくつかの通りに分かれて屋台が少しずつ並んでいる。食べ物や飲み物をその場で口にすることはできない。

 世界的に有名なニュルンベルク(Nuremberg)のクリスマスマーケットは今年中止となったが、伝統的な開会式だけはオンライン開催にこぎつけた。北西部の町カルカル(Kalkar)でも、ドライブイン方式のマーケットが開かれている。

 ランツフートのシュミット氏によると、同市のクリスマスマーケットは11月半ばから開かれ、地元住民らでにぎわっている。「先週の土曜は車が500台来ました」と同氏は語った。(c)AFP/Pauline CURTET