【11月30日 AFP】ハンガリーの文化庁長官が、リベラル派の大富豪ジョージ・ソロス(George Soros)氏(90)をナチス・ドイツ(Nazi)指導者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)になぞらえたとして、厳しく批判されている。

 デメテル・シラード(Demeter Szilard)文化庁長官(44)は28日、欧州連合(EU)の予算と新型コロナウイルス対策パッケージで「法の支配」についての基準が条件とされたことにハンガリーとポーランドが反発している問題についての記事を政府寄りのニュースサイト「Origo.hu」に寄稿。その中で、「欧州はジョージ・ソロスのガス室と化した(中略)ジョージ・ソロスはリベラルの総統だ」と書いていた。

 ハンガリーとポーランドは、EUの予算とコロナ対策パッケージに拒否権を行使してEUと対立している。デメテル氏は、この問題に関する記事で、ポーランド人とハンガリー人は「新たなユダヤ人だ」と述べた。

 デメテル氏は、「こうした『リベラルアーリア人』は今や、われわれがまだ権利を持っている最後の政治的コミュニティーからポーランド人とハンガリー人を締め出そうとしている」と主張した。

 ハンガリー内外のユダヤ人団体や、ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)の記憶を伝える活動をしている団体はデメテル氏を厳しく批判。

 デメテル氏は29日、問題の記事を撤回し、自身のフェイスブック(Facebook)のページも削除したと発表した。

 しかし抗議は29日も続き、ゴルドン・バイナイ(Gordon Bajnai)元首相やリベラル派のカラーチョニ・ゲルゲイ(Karacsony Gergely)ブダペスト市長ら野党の著名政治家らは、オルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相にデメテル氏の解任を要求した。

 オルバン首相は、欧州への移民流入を支援したり、EU予算をめぐる対立の中で欧州議会の議員らにロビー活動をしたりしているとして、ソロス氏への批判を強めていた。

 ポーランドとハンガリーは今月、欧州連合の1兆8000億ユーロ(約220兆円)の予算と新型コロナウイルス対策の支援パッケージに拒否権を行使していた。

 オルバン首相は最近のインタビューで、ソロス氏を「世界で最も腐敗した人物の一人」で「経済犯罪者」と呼んだ一方、法の支配基準は移民に反対するEU加盟国に対する「脅し」だという考えを示していた。

 ハンガリー生まれでホロコーストを生き延びたソロス氏は今月、雑誌「プロジェクト・シンジケート(Project Syndicate)」のインタビューで、「自身の国から好き放題に金を巻き上げる収奪政治制度」をつくり出しているとして、オルバン氏を批判していた。(c)AFP