2020.12.14

CARS

明暗を分けた国産ジェット機事業 “三菱“凍結を尻目にホンダジェットの鼻息

2018年に発売したホンダジェットのバージョンアップ版「エリート」。燃料タンクを大きくして航続距離を伸ばした。

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事実上の事業凍結を発表した三菱重工業の三菱スペースジェット。だがもうひとつの国産ジェット機、ホンダジェットの人気はいまだ収まる気配がない。明暗を分けた両者の違いとは?


すでに報じられている通り、三菱スペースジェット(従来MRJと呼ばれていた)は事業継続が出来ず事実上の凍結にすることを発表した。状況を見れば当然のことだと思う。当初予定だと2011年初飛行。2013年初号機をローンチカスタマー(最初のお客さん)であるANAに引き渡すことになっていた。しかしトラブルの連続により初飛行が2015年11月と当初予定より4年も遅れてしまった。さらに、続く飛行テストで負荷を掛けていくと、カーボンコンポジットからアルミに変えた主翼の強度不足が判明!


飛行機の主翼は飛行機そのものといってもよい。この時点でさらなる大幅な遅延が避けられなくなったと思う。同時に電子制御関係の問題まで発覚。2013年時点なら世界で最も燃費の良い機体というセールスポイントを持っていたものの、すでに優位性無し。飛行機会社からすれば性能も価格も標準的であれば、リスクのある新しい機体など選ばない。今回の開発凍結により一段と厳しくなった引き渡しは、来年開発を再開したって最短でも2025年。その時には優れた性能を持つ次の世代の機体が登場してきているだろう。

現在は年産80機

翻って"同級生"であるホンダジェットを見ると、エンジンと機体の同時開発にもかかわらず(スペースジェットはプラット&ホイットニー社のエンジンを使う)大きなトラブルも無く&計画通りに開発が進み、2010年12月に初飛行成功。試験飛行もほとんどトラブルが出ないばかりか、最高巡航速度や上昇スピード、最大巡航高度、燃費などで目標としていた性能を余裕を持ってクリアしていく! 初めて飛行機を作ったメーカーながら、トラブルが無いばかりか性能も抜群ときた。当時、アメリカで驚きのニュースになったほど。


2015年12月にはアメリカの型式証明を取得! エンジンも2015年に製造証明(アメリカ航空局にとってホンダは23年ぶりの新規ジェットエンジンメーカーだという)を取得。機体もエンジンも世界一厳しいアメリカ航空局のお墨付きを貰い、2015年12月から顧客への引き渡しが始まる。2016年に欧州の型式証明を取得したのを皮切りに、世界規模で販路を伸ばしていく。2017年は43機を販売。老舗であるセスナの『サイテーションM2』を抜き、小型ビジネスジェットのベストセラーになった。


そこからは文字通り順風満帆! 2018年に37機。2019年に36機を販売し3年連続で販売TOP。2018年に航続距離を2265㎞から2661㎞に伸ばした『エリート』と呼ばれるバージョンアップ版を出したところ、これまた大好評! 現在は年産80機程度という増産体制が整ったけれど、未だ抱えるバックオーダーに追われている状況。ここにきてプライベート機としてのニーズだけでなく、エアタクシーのような小規模のエアラインが導入するケースも出ており、ホンダジェットの人気は収まる気配無し!


なぜ売れているかと言えばいくつも理由を挙げられる。エンジンの搭載位置が機体じゃないため静か。このクラスでは珍しく完全個室のトイレを備え、ライバルを圧倒する性能と燃費の良さを誇る。なにより決定的なのは、すでに150機を超える機体が運用されているにもかかわらず、1度も大きなトラブルを出していない点にあると思う。加えてホンダ製エンジンの点検サイクルはライバルエンジンより長いため、ランニングコストも低い。 


名機になる予想しか出来ない状況と言える。唯一の不満を挙げるとするなら就航すれば気軽に乗れるはずだったスペースジェットと違い「なかなか乗れる機会がない!」ということでしょうか?


文=国沢光宏 写真=本田技研工業


(ENGINE2021年1月号)

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