【12月7日 AFP】バングラデシュの造船業界が活況を呈している。国内最大の造船所はハンマーや火花の騒音であふれ、会話もままならないが、それはまさにコロナ禍での経済的打撃を、この業界が乗り切れていることの証しに他ならない。

 人口1億6800万人のバングラデシュでは、船が主な移動手段となっている。広い低地に張り巡らされた河川はいわば生命線で、近年の力強い経済成長により、同国では新しい船や大型船への投資が増えている。

 首都ダッカ郊外チャールカリガンジ(Char Kaliganj)の造船所には、修理中の船がずらりと並び、辺りには油や化学薬品の刺激臭が漂っている。

 作業員のアブル・カシェム(Abul Kashem)さん(66)はAFPに対し、これほど忙しかったことは経験がないと述べ、「新型コロナウイルスのロックダウン(都市封鎖)中は造船所も閉鎖された。しかし、今は大盛況だ」と続けた。

 造船所所有者の組合を率いるマスード・フセイン・パラシュ(Masud Hossain Palash)氏は、市場の需要を満たすため、作業員1万5000人が週7日稼働しなければならない時もあると話す。

「1980年代、造船所ではまだ1階建てもしくは1.5階建ての木製フェリーしか製造できなかった」とカシェムさんは振り返る。現在は、石油タンカーやばら積み貨物船も手掛けている。

 造船産業は、繊維産業とともに好景気のなかで急成長を遂げた。同国は、世界2位の衣料品輸出国となった。

 国内総生産(GDP)は昨年8.2%増加した。コロナ禍における経済的打撃は、他の開発途上国と比べると軽度で済むとみられている。また、国際通貨基金(IMF)によると国民一人当たりGDPは今年、隣国インドを上回る見通しだ。

 だが、問題もある。児童労働が絶えないことと、労働法が適切に施行されていない問題だ。造船所で働く子どもたちが受け取る金銭的対価は、成人が受け取る額よりも著しく少なく、また死傷リスクもあると活動家らは指摘している。(c)AFP