【11月29日 東方新報】中国でオンライン診療を専門とする「インターネット病院」が急激に増えている。新型コロナウイルスの流行により、その勢いはさらに加速している。

 中国初のインターネット病院は2015年、浙江省(Zhejiang)桐郷市(Tongxiang)に誕生した。国土が広大な中国は地域によって医療レベルが大きく異なり、内陸部や農村部で適切な治療が受けられない地域も少なくない。インターネット病院ではスマートフォンのオンラインチャットで診察を受け、処方箋も得られるようになった。患者たちからは「時間と金をかけて都会の大病院に行く必要がなくなった」と歓迎された。

 中国国家衛生健康委員会によると、インターネット病院は2018年に100か所余りに増加。政府の「インターネット+医療」という成長戦略に乗り、2019年は500か所を超え、そして今年には900か所以上に拡大した。

 今年に入り倍増する勢いとなったのは、新型コロナウイルス流行の影響が大きい。新型コロナウイルスが最初に広がった湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)では2月、オンライン診察の一部が医療保険の対象となった。その後のコロナ禍の拡大とともに全国でも適用され、ネット問診、リモート診断、調剤、医薬品の配送などが一気に広がった。実際の検査が必要な場合、検査車両を派遣できる。

 インターネット病院は全国の医療機関や数十万人の医師と連携しており、専門の医師とのマッチングが進んだ。重症患者に対しては複数の医師がオンライン上で立ち会い、最適な治療方法を話し合うことができる。医師の診察時間の効率化が進み、感染リスクが大きく減少した。

 中国の農村部ではかつて「赤脚医生(裸足の医者)」と呼ばれる人々がいた。1960年代から1980年代にかけ、基本的な医学知識と救急医療の訓練を受け、「医者」として働いていた農民たちだ。無医村の村で地域の衛生や予防医療を呼びかけ、最低限の治療に努めていた。

 およそ半世紀が過ぎ、農民たちもスマートフォンを手にしながら都会の医師に診察を受けられるようになった。医療体制の変遷は、中国社会の発展や変化を象徴している。(c)東方新報/AFPBB News