【11月29日 CNS】米スペースX(SpaceX)の「スターリンク(Starlink)計画」などの低軌道衛星通信が第5世代移動通信(5G)を覆すネットワークとなるか注目を集めている中、15日に北京で開かれた第2回中国インターネット基礎資源会議で「低軌道衛星通信と5Gは補完関係なる」という意見が出された。

 米国の実業家イーロン・マスク(Elon Musk)氏が率いる民間宇宙企業スペースXは2015年から、540~570キロの低軌道に4万2000基の小型通信衛星を打ち上げるスターリンク計画を進めている。光ファイバーケーブルや携帯電話の基地局もない地域を含め、地球全体に死角のない高速インターネット通信網を張り巡らす構想だ。米国のスタートアップ企業ワンウェブ(OneWeb)やカナダの通信企業テレサット(Telesat)も低軌道衛星通信計画を開始している。

 中国信息通信科技集団副社長で無線移動通信国家主要実験室主任の陳山枝(Chen Shanzhi)氏は15日の会議で「低軌道衛星通信には明らかな利点と限界の両面がある」と指摘した。

 陳氏によると、現在のモバイル通信サービスは人口の約70%をカバーしているが、技術面や経済面の制約から陸地の約20%、地球全体の6%未満しかカバーできていない。これに対し衛星通信は空中や海、砂漠地帯などもカバーし、飛行機や船舶の運航から海上油田の安全確認、森林火災の予防、野生生物の監視などあらゆるニーズに対応できる。

 その一方で陳氏は、衛星通信は情報を伝達するスペクトル効率が低く、スターリンク計画の平均スペクトル効率は3Gレベルにとどまると指摘。また、衛星通信ネットワーク構築と運用のコストはモバイル通信よりもはるかに高い。衛星通信端末のアンテナは大きく消費電力は5Gより高く、屋内では利用できないなど、多くの課題があるとしている。

 中国の企業も低軌道衛星「虹雲(Hongyun)工程」と「鴻雁(Hongyan)」衛星ネットワークを立ち上げている。陳氏は「衛星通信は5Gと統合して開発する必要がある。中国は当初から衛星通信と5Gの互換性を研究しており、将来の6G時代における高、中、低軌道衛星通信と地上モバイル通信の有機的統合の基礎を築くだろう」と見解を示した。(c)CNS/JCM/AFPBB News