【11月25日 People’s Daily】11月24日午前4時30分、中国・海南省(Hainan)の文昌宇宙発射場で、無人月面探査機「嫦娥(Chang'e)5号」を載せた大型ロケット「長征5号」が打ち上げられ、約36分後に予定の軌道に乗った。月の土壌を採取して地球へ持ち帰る「サンプルリターン」の旅がついに始まった。

 嫦娥5号は軌道機、帰還機、着陸機、発射機の4種類で構成されている。月の軌道に乗った後、着陸機と発射機がセットで分離して月面に着陸し、プログラムに基づいて土壌を自動採取する。そしてサンプルを収めた発射機だけが着陸機から分離して月面を飛び立つ。発射機は月の上空で待機している軌道機と帰還機にドッキングし、土壌サンプルを帰還機に移す。そして地球に向かい、最後は帰還機だけが切り離されて大気圏に再突入する。

 嫦娥5号は三大重要任務を担っている。第一に、土壌サンプルの自動採取、月面からの離陸、月軌道上のドッキングといった難度が高い任務を成功させること。第二に、中国初の地球外からのサンプルリターンを実現し、中国の科学技術を大きく進歩させること。第三に、将来的に月面有人着陸を実現するための人材育成、技術の蓄積の基礎となることだ。

 今回の月探査計画は国家宇宙局月面探査・宇宙プロジェクトセンターが中心となり、国有企業の中国航天科技集団(CASC)がロケット開発や空間技術研究を担い、中国衛星発射測控系統部(CLTC)がロケット打ち上げや衛星の管制センター、回収作業を担当し、中国科学院国家天文台が科学的データの収集、分析を行う。

 月探査計画は「国家中長期科学技術発展計画要綱2006〜2020」に基づき、中国の科学技術の促進と総合的国力を高める重要プロジェクトだ。2004年に計画を開始して以来、2007年の嫦娥1号と2010年の嫦娥2号で月の周回軌道上からの探査を成功させ、2013年には嫦娥3号が月面に着陸。2019年には嫦娥4号が世界で初めて、地球から直接交信ができない月の裏側への着陸に成功している。

 嫦娥5号がサンプルリターンを果たせば、米国、旧ソ連に続いて44年ぶりの快挙となる。今回の全行程は1か月未満の計画で、12月中旬に月の土壌を収納した帰還機が地球に戻る予定だ。(c)People's Daily/AFPBB News