【11月24日 AFP】フランスの首都パリ13区の薄暗い住宅街。半開きの扉は、廃線になった地下鉄のトンネルへの、そして今は違法なレイブパーティー会場への入り口の目印だ。新型コロナウイルス対策として政府が実施しているロックダウン(都市封鎖)から逃れ、自由を満喫したい人々のために、300人規模のパーティーが開かれている。

「ドアを閉めろ」。物陰にいた「ドアマン」がささやき、参加者たちの携帯電話の光だけが照らし出す線路へと案内する。

「I Want to Break Free(自由になりたい)」と題した土曜夜のレイブパーティーのチケットは、フェイスブック(Facebook)の「プライベート」グループに入っているメンバー限定で15ユーロ(約1900円)で販売され、数時間で売り切れた。

 会場の場所は直前まで明かされず、ルールは厳格だった。午後8時から9時までに1人で来ること。グループの場合は最大3人まで。

 高さ20メートルほどの広大な地下空間から、テクノのビートが鳴り響いてくる。壁にはサイケデリックな映像が映し出され、ライトやネオンが彩っていた。次々に人がやって来るが、大多数はマスクをしていない。

「私たちは一種の抵抗として、みんなで隠れてパーティーをやろうよと呼び掛けた。若者が集まれる場所がなくなってしまったので」と、主催者のアレクサンドルさん(仮名、27)は話した。「2時間もあれば、どこでもセッティングして、こういう非公開のパーティーを開ける」

 捕まれば、無謀な危険行為で最高1万5000ユーロ(約190万円)の罰金を科される恐れもある。

 参加者の一人、イバンさん(23)は、「働きづめだったので息抜きを必要としていた」と話し、「ロックダウンで生活のバランスがすっかりおかしくなった。自分のアパートに1か月も閉じこもって。心の健康のためには、このパーティーが必要だ」と続けた。

 こうした感情は広がってきているようだ。新型コロナウイルスの感染者が再び急増し、フランス政府が10月に部分的なロックダウンを発表して以来、警察が取り締まった違法なパーティーは数十件に上っている。

 映像は21日撮影。(c)AFP/Daphne ROUSSEAU