【11月27日 AFP】米ファイザー(Pfizer)や米モデルナ(Moderna)他の製薬グループは、実効性のある新型コロナウイルスワクチン開発のため全世界でしのぎを削っているが、そこで一つのカギとなるのは、臨床試験に自ら進んで参加する多数の被験者を得ることだ。

 米フロリダ州マイアミ駐在のAFP特派員レイラ・マコール(Leila Macor)が、モデルナの臨床試験の一つに参加した。モデルナは16日、自社の実験的ワクチンが94.5%の有効性を示したと発表した。

 ぜんそくを患うマコールが、3万人を対象とするモデルナの臨床試験の被験者の一人になろうと決めた理由は何だろうか。この記事では彼女が、チリで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により父親を亡くしてからわずか数週間後に始まった自身の体験について詳しく語っている。

■厳しい決断

 7月下旬にファイザーとモデルナが新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を開始する3週間前、父がこの世を去りました。コロナ禍で非常に多くの人がそうだったように、独りで。

 家族が心の痛手をこらえつつ、できる限り最善の別れをする中、私はもう一つの厳しくそして危険な現実に直面していました。マイアミが新型コロナウイルスのホットスポット(局地的流行地)になりつつあり、私の仕事はそのニュースを取材することだったのです。

■ワクチンか、プラセボか?

 8月中旬、臨床試験を実施している研究所に行くと、ネームプレートを付けられて事務所に連れて行かれ、これからどういうことが行われるかについてスタッフから説明を受けました。詳細を記載した22ページの書類も渡されました。

 臨床試験はワクチン2回分で構成されます。研究自体は2年間にわたりますが、被験者には2400ドル(約25万円)の報酬が支払われます。注射部位の痛みから発熱、悪寒までの副作用が起こる可能性があると注意を受けました。

 3万人の被験者が二つのグループに分けられます。ワクチンを投与されるグループと、プラセボ(偽薬)を投与されるグループです。

 自分のグループについて看護師に尋ねると「私たちも、どっちがどっちか知らないのです」と言われました。把握できるのはモデルナだけですが、それもデータが集められて分析される段階になって初めて知るのです。

 血圧を測っている時、看護師は私の方に顔を上げ、真剣な口調でこう言いました。「プラセボはワクチンと同じくらい重要です。臨床試験には対照群が不可欠です。どちらにしても人類の助けになっているのです」

 自分の状況のことで頭がいっぱいになり、最終的な目的に集中できないことに対して良心が痛みました。その目的とは、あらゆる人がこのコロナ禍を乗り越える助けになることです。私はこれ以上質問するのはやめました。