【11月23日 AFP】22日に閉幕した男子テニスのATPファイナルズ(ATP Finals 2020)では、2年連続でノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)、ロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)、ラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)の「ビッグ3」の姿が決勝になく、代わりに3強体制に風穴を開けたい若手が優勝を争った。

 今大会では、ダニール・メドベージェフ(Daniil Medvedev、ロシア)とドミニク・ティエム(Dominic Thiem、オーストリア)がシーズン最終戦決勝のひのき舞台に上がり、メドベージェフが優勝した。この結果は、男子テニスの一時代が終わる兆候なのだろうか、それとも、これまでと同じ偽りの夜明けなのだろうか。

 ジョコビッチとナダルが激戦の末に準決勝で若手に屈したことは、結果そのもの以上に重大な出来事に思える。

 世界ランキング1位のジョコビッチと対戦したティエムは、第2セットのタイブレークで4本のマッチポイントを逃し、迎えた最終セットでもタイブレークで0-4と追い込まれたが、そこから見事に持ち直して勝利を収めた。メドベージェフも1セットを先行されたが気落ちせず、第1セットを取った試合は71連勝中だったナダルから逆転勝利を収めた。

■最終戦の結果は参考にならない?

 しかしこれまでを振り返ると、ATPファイナルズの結果は、翌シーズンの展開を予測する指標にはなりづらいことが分かる。

 今回のメドベージェフを含め、最終戦は過去6大会で全て別の選手が優勝しているが、2016年にトロフィーを掲げたアンディ・マレー(Andy Murray、英国)を別にすれば、翌年からのグリゴール・ディミトロフ(Grigor Dimitrov、ブルガリア)、アレクサンダー・ズベレフ(Alexander Zverev、ドイツ)、ステファノス・チチパス(Stefanos Tsitsipas、ギリシャ)は四大大会(グランドスラム)決勝に合計で1回しか進出できていない。

 ナダルは室内ハードコートを最も苦手としており、ジョコビッチは2012年から2015年にかけての4連覇後、この大会でベストのプレーができていない。フェデラーも今季はけがで出場していない。

 テニス界では依然としてグランドスラムが最高の栄誉で、そしてそこでは、3強によるかつてない支配体制がまだまだ続いている。

 ビッグ3は、グランドスラム過去67大会中なんと56大会で優勝しており、直近では15回中14回タイトルを獲得している。今季の全米オープン(US Open Tennis Championships 2020)でティエムがようやく3人の連勝に歯止めをかけたが、この大会はナダルとフェデラーが不在で、圧倒的な優勝候補と言われたジョコビッチは失格に終わっていた。

 全仏オープン(French Open 2020)では、ナダルが大会を通じて1セットも落とさずに13度目の優勝を達成しており、2021年シーズンもツアーはナダルとジョコビッチの二人が中心になるとみられる。ナダルはメドベージェフに敗れた後、「モチベーションは今も昔も変わらない」「来年は重要な年になる。勝ち取りたいものを勝ち取る戦いに向けて準備したい」と若手にとっては恐ろしいコメントを発している。