【11月18日 AFP】グリーンランドの3大氷河は、これまでの海水温上昇予測の最悪の筋書きより速いペースで融解する恐れがあるとの研究論文が17日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。これらの氷河は、海面を約1.3メートル上昇させるのに十分な量の氷水を有する。

 2000年までの海面上昇の主な要因には、氷河の融解の他、海水温の上昇による海水の膨張があった。だが過去20年ではグリーンランドと南極(Antarctica)を覆う氷床が海面上昇の最大かつ単独の要因となった。

 論文によると、デンマークと英国の研究チームはグリーンランドのヤコブスハブン氷河(Jakobshavn Glacier)、カンゲルルススアーク氷河(Kangerlussuaq Glacier)、ヘルヘイム氷河(Helheim Glacier)それぞれから過去に消失した氷の量を、画像資料を含む一連のデータに基づき推計。1880~2012年にヤコブスハブン氷河から失われた氷の量は1兆5000億トン余り、1900~2012年にカンゲルルススアーク氷河とヘルヘイム氷河から失われた氷の量はそれぞれ1兆4000億トン、310億トンだったとの推計を明らかにした。研究チームによれば、これらの氷床の融解が8ミリ余りの海面上昇に寄与した。

 国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発表した、温暖化ガスの排出量が最も大きいシナリオ「RCP8.5」に基づいたモデルからは、この3大氷河の融解により、2100年までに海面が9.1から14.9ミリメートル上昇する可能性があることが示唆されている。しかし、研究チームはRCP8.5シナリオで予測されている気温の上昇幅は、20世紀中の上げ幅の4倍超だと指摘。3大氷河の融解量は、これまでの予測の3〜4倍になる可能性があると述べ、この最悪のシナリオが「過小評価」されていると言明した。(c)AFP/Patrick GALEY