【11月17日 AFP】国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は16日、ベルギーの高齢者施設は新型コロナウイルス流行下において、当局に事実上「見捨てられた」状態となっており、入居者らの人権が侵害されているとする報告書を公表した。

 新型ウイルス感染症の死亡率が世界でも上位のベルギーでは、これまでの死者1万4000人のうち60%以上が高齢者施設の入居者だったとアムネスティは推計する。

 国際医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」のベルギー支部も同様の推計を発表しているが、ベルギー政府は43%だと主張している。

 アムネスティによると、ベルギーの高齢者施設でこうした事態が起きている原因には、慢性的な資金難、医療アクセスの悪さ、職員用の防護用品の不足、面会制限、病院による病気の高齢者の受け入れ拒否があるという。

 アムネスティは、入居者とその家族、施設の管理者や職員による計50件以上の証言に基づき、入居者の生命権、健康権、平等権のすべてが侵害されていたと主張している。

 居室の衛生状態が基準を満たしていなかったり、水や食事さえ十分に提供されていなかったりする例もあったという。また認知症の入居者の動きを制限するために、拘束具や薬品が使用されているという証言もあった。

 さらに報告書は、新型ウイルスの流行第1波の際に、面会制限で社会的接触を断たれたことが、一部の入居者の「認知能力の著しい低下」につながったと指摘している。

 アムネスティは高齢者施設を管轄する地方自治体に対し、施設職員と入居者が定期的に新型ウイルス検査を受けられる態勢づくりを求めている。(c)AFP