【11月16日 People’s Daily】空間を黒く塗ったような真っ暗な夜、連なる山々も眠りについている頃、中国江西省(Jiangxi)遂川県(Suichuan)の営盤圩郷では、環境調査員による鳥類の調査が続いていた。

「シュシュッ」。1羽の鳥が急降下して飛来する音が聞こえると、調査員の曽祥鵬(Zeng Xiangpeng)さんはすぐに起き上がり、急ぎ足で山を駆け上がった。

「あれはアリスイですね。アリを食べるキツツキ科の鳥ですよ」。自分の庭の鳥でも見つけたかのように、手慣れた様子の曽さん。2017年に調査活動を始めた当時、若き曽さんはこの小さな鳥を判別するのにすいぶん悩まされたものだった。「首が蛇のようにニョロニョロ動き、頭は360度近く回転して…」

 鳥類図鑑や資料を見ても分からない。「この鳥だ」と思っても、よく見ると違っている。頭を抱えた曽さんは、地元保護区管理局の鐘平華(Zhong Pinghua)顧問に教えを請うた。「首がぐねぐねと動くのは、アリスイが驚いて緊張した時の動きだよ」。すぐに答えが返ってきた。

「鐘先生はまるで百科事典のようで、何でも正解を教えてくださります」と曽さん。曽さんが江西環境工程職業学院(日本の短大や高専に相当)に通学していた時、鳥の見分け方を教えていたのが鐘顧問だった。かつての師弟がいま同じ調査に携わることに、鐘さんは常々、「情熱をつなぐ、いわば『青春のリレー』です」と話している。

「私たちは渡り鳥に金属の輪を取り付け、飛行ルートの研究をしています。学界で標識調査と呼ばれる手法です」と鐘さん。この18年間、鐘顧問や曽さんらのリレーにより、標識調査をした渡り鳥は15目、49科、210種、34516羽に達した。鳥の種別では中国全体の7分の1を占める。

 2002年9月、全国鳥類標識調査センターの専門家が遂川県を訪れ、鐘さんと調査をした。鳥類の識別、生息数の確認、環境安全調査…。白髪交じりの2人のベテラン研究者が持てる知識と経験を互いにぶつけあった。そして2005年、中国教育機関の権威・中国工程院や中国鳥類学会などの専門家は、大量のデータをもとに、遂川県が渡り鳥の主要な飛行ルートであり、重要な休息地であると認定した。

 科学技術の発展は、鳥類調査の世界にも恩恵をもたらしている。2018年には保護区で初めて、人工衛星が追跡できる装置を渡り鳥に取り付けた。これで渡り鳥の飛行経路がリアルタイムで確認でき、渡り鳥の保護活動にもプラスとなった。曽さんは「保護区には、水や栄養のある維管束植物が2165種あり、昆虫も784種おり、渡り鳥が十分に栄養を補給できる。集中調査の時期は毎年50日程度ですが、環境調査員は365日、保護活動を続けています」。

 保護区で標識調査をする鳥類は8年続けて増加しており、コンヒタキやモズ類など新たな鳥類も発見されている。世代を超えた「情熱のリレー」が、これからも渡り鳥の聖地を守り続ける。(c)People's Daily/AFPBB News