【11月15日 AFP】(更新、写真追加)東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10か国に中国、日本、韓国、ニュージーランド、オーストラリアを加えた15か国は15日、テレビ会議形式の会合を開き、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の協定に署名した。アジア周辺で影響力を拡大する中国にとっては、大きな成功であるとみられている。

 専門家らによると、RCEPは国内総生産(GDP)の面で世界最大規模の貿易協定となる。関税引き下げや域内でのサービス貿易の拡大が盛り込まれたこの協定に米国は含まれておらず、米国が抜けた環太平洋連携協定(TPP)の代替となる中国主導の貿易協定ともみられている。

 貿易の専門家であるシンガポール国立大学ビジネススクール(NUS Business School)のアレクサンダー・カプリ(Alexander Capri)氏はRCEPについて、「一帯一路(Belt and Road)周辺における中国の地域的・地政学的野心を広く強固にするもの」と指摘した。

 インドは昨年、国内に安い中国製品が流入することを懸念し、RCEPから撤退。後から参加することも可能だが、インドを除いても参加国合計の人口は21億人に上り、GDPは世界の30%を占める。

 RCEPをめぐっては、ドナルド・トランプ(Donald Trump)政権下の米国がTPPから離脱したことを受け、中国がアジア太平洋地域における貿易のルール作りを進める手段となっているとの見方もある。

 米多国籍企業はRCEP加盟国内の子会社を通じて恩恵を受けることができるが、専門家らは、今回の合意によってジョー・バイデン(Joe Biden)氏が、アジア太平洋地域への米政府の関与を再考する可能性もあるとみている。

 しかし、情報調査会社IHSマークイット(IHS Markit)のエコノミスト、ラジブ・ビスワス(Rajiv Biswas)氏は「アジア諸国に米国の雇用が奪われる懸念から、米有権者の多くがTPP交渉にかなり否定的反応を示していることを考慮すると、TPP参加は当面の優先課題にはならないと予想される」と述べている。(c)AFP/Alice Philipson, with Martin Abbugao in Singapore