【11月15日 AFP】アルメニアとアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフ(Nagorno-Karabakh)の外側に位置するキャルバジャル(Kalbajar)地域は14日、両国の停戦合意によってアゼルバイジャンの支配下に置かれることになったのを受け、住民らがアルメニアへの避難を前に自宅に火を付けた。

 数十年にわたりアルメニア側が支配してきたキャルバジャル地域では、15日からアゼルバイジャンの支配下に置かれるとの発表を受け、大勢の住民が集団脱出を始めた。

 現場のAFP記者が目撃したところによると、キャルバジャル地域の村で、アルメニア側に残るマルタケルト(Martakert)と接するチャレクタル(Charektar)では14日朝、少なくとも6軒の民家に火が放たれ、谷の上空に濃い煙が立ち上った。

 ある住民は、空っぽになった家の中に燃える木の板やガソリンでぬらしたぼろ切れを投げながら「これは私の家だ。この家をトゥルク(アルメニア人がアゼルバイジャン人に使う呼称)に残すことはできない」「すべての住民がきょう、自分たちの家を燃やすつもりだ。私たちは深夜までに離れることになっている」と語った。

「私たちは両親の墓も移動させた。アゼルバイジャン人たちはわれわれの墓を汚すことに喜びを感じるだろう。それには耐えられない」

 前日の13日にはチャレクタルやその周辺で、少なくとも10軒の民家が焼かれた。

 かつてキャルバジャルには、ほぼアゼルバイジャン民族のみが住んでいたが、旧ソ連解体後の1990年代に起きた戦争でアルメニア人らから追放され、当初アゼルバイジャン人が所有していた家の多くが焼かれた。

■死者4000人以上とプーチン大統領

 アルメニアは14日、9月下旬から6週間続いた今回の軍事衝突によるアルメニア側の戦死者は前回の公式発表より1000人近く多い2317人になったと発表した。アゼルバイジャン側は戦死者数を発表していない。

 しかし、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は13日、今回の軍事衝突による死者は4000人を超えており、数万人が避難を強いられたと述べた。(c)AFP