【11月13日 AFP】カナダの移民省は12日、香港の若者たちのカナダ留学やカナダでの就職を支援する新たな方針を打ち出した。既に国内に滞在している香港人についても、永住を容易にする。香港国家安全維持法(国安法)に基づく中国当局の取り締まり強化を受けての対応だ。

 マルコ・メンディチーノ(Marco Mendicino)移民・難民・市民権相は記者会見で、国安法は「中国の国際社会に対する義務に真っ向から反し、『一国二制度』の枠組みを損なう」として、「深い憂慮」を表明。香港議会の民主派議員4人が11日に資格を剥奪された一件は「(香港)基本法を軽視している明確な証拠であり、香港における人権をむしばむ結果となっている」と批判した。

 その上でメンディチーノ氏は、既に香港からの留学ビザ(査証)申請数は今年に入って増加しており、カナダ政府は申請処理の迅速化により受け入れ人数を増やす方針だと述べた。

 新制度では大学や専門学校を最近卒業した香港出身者に、雇用主・職種を限定しない有効期間3年の就労許可申請を認める。カナダで1年以上の就労経験を積むと、永住権や家族の呼び寄せの申請が可能になる。

 また、亡命申請が却下された人についても今後は、香港に送還された場合に身の危険があることを理由にした再審査の請求を認める。政府の文書によれば、人権状況の悪化により迫害を受ける恐れがある香港人は、カナダに再定住する権利を得られる可能性がある。

 香港の民主派議員による集団辞職表明について、中国政府の香港マカオ事務弁公室は12日、「(中国の)中央政府に対する頑固な反抗であり、中央政府の権力に対するあからさまな挑戦」だと激しく非難。野党議員らが集団辞職によって「過激な闘争を訴え、外国勢力の干渉を乞い、再び香港を混乱に陥れようとするなら、それは間違った計算だと言わねばならない」と警告した。

 一方、英国政府は12日、在ロンドン中国大使を外務省に呼び、民主派議員4人の資格剥奪は国際条約の履行義務違反だと非難した。

 英植民地時代最後の香港総督クリス・パッテン(Chris Patten)氏は、4議員の資格剥奪は「民主主義における説明責任と、そのために立ち上がろうとする者たちへの(中国政府の)全面的な敵意」を如実に表す動きだと述べている。(c)AFP