【11月12日 AFP】約5億2000万年前に生息していた五つの目を持つエビに似た生物の化石が見つかり、地球上で最も多い生物種の進化をめぐる長年の議論に終止符が打たれる可能性が出てきた──。ロブスターやカニ、クモ、ヤスデなどを含む、節足動物だ。

 節足動物は、現存する全動物種の約80%を構成する。だが、その進化については長年にわたって謎とされてきた。古代の祖先が、現代の節足動物にはないさまざまな特徴を有していたことがその理由だ。

 しかし、中国の雲南(Yunnan)省で見つかったエビに似た生物「キリンシア(学名:Kylinxia zhangi)」の化石が、節足動物の進化における重要な「ミッシングリンク(失われた環)」になる可能性があると専門家は指摘する。

 キリンシアには硬い殻、体節、関節のある脚があった。これらは、今日の節足動物の特徴と同じだ。その一方で、より古い時代の動物と共通する特徴も併せ持っていた。そうした理由から、中国の神話に登場する架空の生き物で、さまざまな動物の特性を併せ持つ「麒麟(きりん)」にちなんだ学名が付けられた。

 そのうちの一つは、五つの目だ。キリンシアの頭部には、一列に並んだ三つの小さな目とそのすぐそばに二つの大きな目があった。奇妙に思えるこの特徴だが、五つの目は「オパビニア」と呼ばれる別の古代生物ですでに確認されていた。

 さらにキリンシアに見られたとげのある前方の付属肢一対は、節足動物の祖先と考えられている別の生物「アノマロカリス」を連想させる特徴だと指摘された。

 オパビニアもアノマロカリスもともに現代の節足動物の祖先であるとの仮説が立てられている。しかし、これまでは化石記録に「進化の隙間」があったため、仮説の証明が困難となっていた。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に先週掲載された論文の第一執筆者で、中国・南京地質古生物研究所(NIGPAS)の研究者のハン・ゼン(Han Zeng)氏はキリンシアについて、「英自然科学者チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)の進化論で予測された、極めて重要な過渡期の化石の一例となる」と話す。

 そして「キリンシアは、アノマロカリス類からその後の節足動物への進化の隙間を埋め、節足動物の起源における重要なミッシングリンクの一つを形成する」と説明した。(c)AFP/Sara HUSSEIN