【11月10日 AFP】男子ゴルフの一部選手は9日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で大会が無観客での開催となり、歓声なく静まり返っている中でプレーする上で最も打撃を受けるのは、今季メジャー第3戦の第84回マスターズ・トーナメント(The Masters Tournament 2020)になるだろうとの考えを示した。

 新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)により今年のマスターズは半年以上遅れ、12日に米ジョージア州オーガスタのオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ(Augusta National Golf Club)で開幕するが、グランドスタンドに加えてパトロンを誘導するロープは存在せず、見事なショットへの歓声も記憶の中のものとなる。

 世界ランキング10位のパトリック・キャントレー(Patrick Cantlay、米国)は、「この場所(オーガスタ)は、他のコースよりも大きな違いを感じるだろう。なぜなら雰囲気が、他の週(大会)とは全く違っているだからだ」と語った。

「ここのファンは最もゴルフに詳しいリスペクトすべき存在で、ある意味で他の週には感じない雰囲気を大会にもたらしている」「歓声がまったく聞こえないのは奇妙な感じだろう。とにかく、そこには存在しない。ゴルフコースを回って感じられるエネルギーを、今年は味わうことができないんだ」

 それを誰よりも分かっているのは、2013年にオーストラリア勢初のマスターズ覇者となったアダム・スコット(Adam Scott)だろう。同選手は子どもの頃から憧れていた母国の英雄グレッグ・ノーマン(Greg Norman)氏が、マスターズではあと一歩のところで何度もタイトルを逃してきたのを見ており、「何よりも違うのは、観客がいない中でプレーすること。本当に大きな違いだ」「メジャー大会の土曜日にいつもの歓声がなければ、特にそう感じるはず」と語った。

 スコットは観客がいる前でオーガスタでの最初のティーオフに臨むときがシーズン中で最も精神的に消耗するといい、「それは観客がつくり出す雰囲気のせいだ」「自分が一年で最も緊張するのは、オーガスタでの最初のティーオフだ。あの期待感は、前のメジャー大会から通常は8か月の間が空くことで醸し出される。それに、マスターズであるというだけでそうなる」と明かした。

「(大会初日の)木曜日に最初のティーに歩いて行くとき、緊張感は最高点に達する。なぜなら、自分に人々の視線が注がれるからだ。それはどんどん蓄積されていき、年を追うごとにそうなっていく」

■無観客でも問題なし

 一方、今年の全米プロゴルフ選手権(2020 PGA Championship)を制したコリン・モリカワ(Collin Morikawa、米国)は、オーガスタ・ナショナルにファンがいないという珍しい光景を喜んでおり、「ファンがいないマスターズに出場できて、自分はとてもラッキーだ」と語った。

「フェアウエーで列をなすファンに目を向けたりする必要も、グランドスタンドが視界に入ったりすることもない」「ありのままのコースが見られた。それは今年だけでなく、これからの年月でとても有益なものになるだろう。グランドスタンドがあると目標への視線が変わってしまう可能性があるけれど、ありのままのコースを見ることはとても役に立つ」

 大会初出場のマシュー・ウルフ(Matthew Wolff、米国)は、いつも存在しているパトロンの姿が直接見えないことを冷静に受け止めており、「1打差でリードしている中でプレーを続ける場合、グリーン後方に座って全てのショットを見守っている数千人のファンがいないのは、確かに少し気持ちが楽になるだろう」「カメラを通して観客が見ているとしても、直接的に観客の姿を見るのとでは少し違う」と話した。(c)AFP/Jim SLATER