【11月9日 AFP】タイ南部の国立公園当局が、ヤドカリのために貝殻を寄付してほしいと人々に呼び掛けている。新型コロナウイルス流行を受けて外国人観光客が激減する中、ヤドカリの生息数が激増し、すみかにする死んだ貝の殻が不足して「住宅難」が起きているためだ。

 クラビ(Krabi)県にあるランタ諸島国立公園(Mu Koh Lanta National Park)では、一部の島でヤドカリの個体数が爆発的に増加している。海洋生物学者らは、観光客が消えたことに一因があるとみている。

 タイ経済は外国人観光客に大きく依存しており、2019年の外国人訪問者数は約4000万人に上った。だが、新型コロナ流行で国際便はほぼストップ。2020年の外国人客数はごくわずかにとどまる見通しだ。

 ランタ諸島国立公園の管理責任者は、貝殻の寄付呼び掛けについて「ヤドカリの数が急増したことが理由だ」とAFPに説明した。ヤドカリは成長して背負った貝殻が小さくなると引っ越すが、新しい貝殻が見つからず、空き缶のふたやガラス瓶などのごみを「宿」とする個体が複数見つかっているのだ。

 国立公園当局は一週間ほど前に貝殻不足の実態を把握。ヤドカリのため円すい形の貝殻を公園事務局に送ってほしいと人々に呼び掛けた。これまでに約200キロの貝殻が集まり、タイで「父の日」に当たる12月5日にボランティアの助けを得て貝殻をヤドカリたちに配るという。(c)AFP