【11月9日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の中、東京五輪の実施競技としては国内初の国際大会となる体操の競技会が8日、東京で観客を入れて開催され、コロナ禍で延期された五輪のあり方の一端がのぞけた。

 パンデミックが収まらず、ワクチンもない状況で大規模な国際大会を開催することに対しては、一部の医療の専門家から疑問の声が上がっている。その中で、「Friendship and Solidarity Competition(友情と絆の大会)」と名付けられた今回の大会は、日本と中国、ロシア、米国の計30人が参加し、厳密にコントロールされた安全な環境で開催された。

 収容人数8700人の国立代々木競技場(Yoyogi National Gymnasium)の第一体育館に集まった2000人のマスク姿の観客は、検温と定期的な手の消毒、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)を求められ、選手や記者と同様に除菌ミストを浴びた。飛沫(ひまつ)の拡散につながる大声は出せず、選手の軽やかな技や力強い演技に対しては控えめに拍手をし、時折小さな声を漏らした。

 参加選手も、ウイルスから身を守る厳しい感染対策を経験した。国外の選手は来日前に最低2週間の隔離を実施。到着後はすぐに厳格なプロトコルの対象となり、ホテルでは専用のフロア以外への移動は禁止で、練習や大会へは指定のバスを使って移動した。

 大会後には、多くの選手が最高のパフォーマンスは発揮できなかったと認めた上で、対策の必要性への理解を示した。

 後に偽陽性と判明したものの、一時陽性の検査結果が出た内村航平(Kohei Uchimura)は、閉会式で「選手の表情を見てもらえるとわかったと思うけど、めちゃくちゃ楽しかったです」とコメント。国民の大半が中止や再延期を支持しているという世論調査の結果に対しては、「できないではなく、どうやったらできるかを皆さんで考えてほしいと僕は思います」と切実な思いを訴えた。(c)AFP