【11月6日 AFP】フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)は5日、サウジアラビアの紅海(Red Sea)沿岸の都市ジッダ(Jeddah)で、来年ナイトレースを初開催すると明らかにした。

 サウジアラビアのスポーツ相を務めるアブドルアジズ・ビン・ツルキ・ファイサル・アル・サウード(Abdulaziz bin Turki Al Faisal Al Saud)王子は、同国が進めている社会改革に言及し、「この大会はわが国のリーダーシップ、特に皇太子の支援を得て、『ビジョン2030(Vision 2030)』の一環として開催される」と述べた。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で2020年シーズンが短縮されたF1がスケジュールの立て直しを図ろうとしている中で、サウジアラビアは史上最多の23レースを予定している21年シーズンの日程に食い込んだ。

 サウジアラビア自体も感染者が34万9000人を超えて死者も5489人に上るなど、厳しいロックダウン(都市封鎖)からの再起を目指しており、アブドルアジズ王子は「このパンデミックを乗り越えて人々がレースを観戦できることを願っているが、この件に関して先行きは不透明だ」と会見で語った。

 F1はバーレーンGP(Bahrain Grand Prix)を開催していることで厳しい監視下に置かれており、サウジアラビアでのレースが追加されることによって人権監視団体からの批判がエスカレートするのは確実になる。

 同国はボクシングやゴルフ、そしてテニスなどの競技に加え、すでにモータースポーツではアラビア砂漠(Arabian Desert)で12日間に及ぶダカールラリー(Dakar Rally)や、電気自動車で争うフォーミュラE(Formula E)を開催している。

 また、サッカーではイタリア・スーパーカップ(Italian Super Cup)やスペイン・スーパーカップ(Spanish Super Cup)を開催し、クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)やリオネル・メッシ(Lionel Messi)らスーパースターが出場していた。

 湾岸諸国のライバルであるカタールが2022年にサッカーW杯(2022 World Cup)を開催する中で、サウジアラビアも2030年に開催される第19回アジア競技大会(19th Asian GamesAsiad)の招致を目指している。

 超保守国家のサウジアラビアは収入に関して石油への依存を減らすために計画された改革に着手しており、こうしたスポーツ大会の拡大は海外の観光客をはじめ、ビジネスや投資を呼び込む動きの一環となっている。

 事実上の国家指導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)が進めている「ビジョン2030」の下で、サウジアラビアは以前よりも穏健的であることをアピールし、人権侵害や強硬的なイデオロギー政策など対外的な悪名を取り除こうとしている。

 しかしながら、アルコール禁止や性差別で有名な同国の改革キャンペーンは、スポーツを利用して人権侵害から目をそらす「スポーツウオッシング」であると、人権団体から厳しい批判にさらされている。(c)AFP