【11月5日 AFP】3日に投票が行われた米大統領選は接戦となり、共和党の現職ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領と民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領の陣営は共に、法廷での決着に身構えている。

 トランプ氏は4日、集計について最高裁判所に持ち込むことも辞さない姿勢を示した。その後、ウィスコンシン州で票の再集計を要求し、ミシガンとペンシルベニアの両州では裁判所に集計の差し止めを求める訴えを起こすと発表した。3州とも両陣営にとって、勝利するためには欠かせない激戦州だ。

 こうしたトランプ陣営の動きによって、2000年の大統領選のように、各州の集計や再集計に関する高等裁判所の判断が最終的に選挙結果を決定するところまでもつれ込むのではないかという懸念が生じている。

■裁判

 トランプ陣営の訴訟が標的としているのは、今回の選挙に特有の側面である郵便投票だ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の影響で、大勢の有権者が郵便投票に走った。各州当局も郵便投票を促し、票の集計に関する法律を整備し直した。

 その中には、米郵政公社(US Postal Service)の負担軽減のために、郵便投票の受付期限を投票日以降にまで延長する措置も含まれている。共和党側はそうした変更措置の一部は、民主党に利する形で不適切に決定、あるいは実行されたと主張している。そしてトランプ陣営は、ペンシルベニア州ではすでに共和党が受け付け延長に対して起こしていた訴訟に乗じる構えだ。この試みが成功すれば、11月2日よりも後に届いた数万票が無効となる可能性もある。

 ペンシルベニア州での訴えは、州最高裁が郵便投票の期限延長を認めた判決を共和党が不服とし先週、連邦最高裁に上訴したが、最高裁はすでにこれを退けている。しかし連邦最高裁は、投票日後の申し立てには道を残している。

 トランプ陣営はまた、民主党がペンシルベニア州の集計過程を隠していると主張し、集計差し止めを求める訴えを起こそうとしている。同州フィラデルフィア(Philadelphia)での集計の様子はライブ配信された。

■大統領選の行方は最高裁に?

 大統領選の行方を最高裁が決めることはできるのだろうか? 答えはイエスだ。

 共和党のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)元大統領と民主党のアル・ゴア(Al Gore)元副大統領が戦った2000年の大統領選では最後、フロリダ州1州の結果に勝敗がかかった。

 同州で採用したパンチカード式の投票方式には問題が多く、州の有権者人口600万に対し537票という僅差でブッシュ氏がリードした結果を受けて、ゴア陣営は州全体の票の再集計を要求した。ブッシュ陣営がこれを連邦最高裁へ持ち込んだ結果、実質的に再集計を阻む判断が下され、勝利はブッシュ氏に渡った。

 だがそうした訴訟が実際的なのは、両陣営が僅差で、しかも深刻な問題に焦点が絞られた場合に限ると専門家らは述べている。

 問題となる州で得票率の差が2~3ポイントだった場合(例えばペンシルベニア州ならば10万票)には、「投票日当日中に訴訟を起こすことは非常に難しいだろう」と、アイオワ大学(University of Iowa)法学部教授のデレク・ミュラー(Derek Muller)氏はいう。だが、「一州でもそれが起これば、非常に深刻な訴訟になるだろう」。