【11月13日 AFP】デンマークの日刊紙は15年前、イスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の風刺画を掲載し、激しい怒りと抗議を招いた。あの風刺画を生むきっかけをつくった作家のコーオ・ブリュイジェン(Kare Bluitgen)氏がこのほど、AFPに当時の経緯を語った。

 当時、ムハンマドについての子ども向けの本を手掛けていたブリュイジェン氏は、目的は、デンマークの子どもたちに国内で信者が2番目に多い宗教であるイスラム教について教えることにあったと語る。「だが、その結果、200人以上が命を落とすことになった」

 2005年の夏、左派の作家、ブリュイジェン氏は、預言者ムハンマドの挿絵を描いてくれるイラストレーターが見つからず、困っているという広告を出した。ムハンマドの描写はイスラム教スンニ派(Sunni)が禁じている。

 当時、デンマークの保守系大手日刊紙ユランズ・ポステン(Jyllands-Posten)の文芸部長だったフレミング・ローズ(Flemming Rose)氏は、ブリュイジェン氏の言葉通り、言うままに、国内の挿絵画家にムハンマドの絵を好きなように描いてほしいという広告を出した。

「新聞社は、イラストレーターが見つからないという私の話は本当かどうか確認したがっていた。まさか、見つからないことはないだろうと」とブリュイジェン氏は振り返る。

 ユランズ・ポステンの呼び掛けに風刺画家12人が応じ、それぞれが描いた風刺画が2005年9月30日に「ムハンマドの顔」という見出しで掲載される。

 そのほとんどは無難なもので、中には、ムハンマドの絵を描く仕事の大変さを面白おかしく表現したものもあったが、最も物議を醸したのは、ニカブをかぶった2人の女性の間にひげを生やした白いターバン姿の男性が剣を持って立っている絵と、導火線に点火した爆弾を頭のターバンに付けている預言者の絵だった。

 ブリュイジェン氏は結局、どの風刺画も自著には使わず、最終的には匿名で挿絵を引き受けてくれるイラストレーターを見つけた。

 ユランズ・ポステンの風刺画は当初、ほとんど注目されなかったが、2週間後には首都コペンハーゲンで抗議デモが行われ、イスラム諸国の大使らも相次いで抗議した。