■「気楽」なアレーズ

 アレーズを引き取ったロベール(Robert)さんとダニエレ(Daniele)さんの夫婦は、他にもルワンダ出身のフツ人の子どもを受け入れ、ジュリアン(Julien)という新しい名前を与えている。

 ジャン・バティストは、もともとムギシャ(Mugisha)という名前だった。「幸運な子」という意味で、残念ながらその名の通りの幼少期は送れなかったが、新しい方の名字はよく合っている。アレーズはフランス語で「気楽に」を意味する「a l'aise」をもとにした名前だ。

 その後、フランスのスポーツ連盟に見いだされた神童は、幅跳びのジュニア世界王者に4回輝くなど、トロフィーを次々に獲得するようになる。しかも、そのうち三つは世界記録でのタイトル獲得だった。アレーズは「そこから人生が変わり始め、フランスを代表できて幸せだった」と話す。

 その後は2012年ロンドンパラリンピックと2016年リオデジャネイロパラリンピックに出場し、リオでは銅メダルにわずかに届かなかったものの5位に入った。東京パラリンピックを目指す現在は、延期が原因で個人スポンサーが減る中、「ブガッティ」と名付けた最先端の義足を身に着けてメダル獲得とフランスへの凱旋(がいせん)を夢見ている。

「今も東京2021か、2022か、あるいは2024年のパリ大会出場を見据えている」とアレーズ。「それがうまくいかなかった場合は、残念ながら人生のページをめくらなくてはならないだろう」 (c)AFP/Emmanuel BARRANGUET