【11月6日 AFP】かつて民主主義の推進派とうたわれた元政治犯で、現在はミャンマーの政権与党・国民民主連盟(NLD)の幹部となった年配の指導者らが今、抑圧、差別、検閲を行う当事者になったとして非難されている。

 NLDが圧勝した2015年の総選挙から5年が経過した。今月8日の総選挙でも、NLDの勝利が広く予想されている。

 この選挙の結果を受け、ミャンマーに民主主義を根付かせたいとする大勢の若者がNLDに参加した。

 しかし、NLD上層部については、軍事政権に反対して服役した経験のない者には閉ざされたままとなっており、実質的に若者らを日陰に追いやっている。

 NLDの現職議員で青年部の元代表アウン・フライン・ウィン(Aung Hlaing Win)氏(37)は、「自分らが将来の政治的指導者になるのだと誇らしく思った」とAFPに語った。「しかし、残念なことに、そうはならなかった」

 NLDの最高意思決定機関を構成する12人の平均年齢は、同党の代表で文民のリーダーでもあるアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏を含め、70歳以上となっている。そして12人全員、軍事政権に反対して刑事施設への収容もしくは自宅軟禁を経験している。

 NLDの若手党員の役割については、主に年長者の補助に限定されており、党外の人と話す際には許可が必要とされ、また演説をするには内容の「検閲」が求められていると説明した。

「抑圧的な仕組みになってしまっている──軍事支配の頃の制度と変わらない」とウィン氏は述べ、「政治犯だったからといって、国を統治する方法を知っているわけではない」と続けた。

■ザ・レディー

 2015年にスー・チー氏のNLD所属の下院議員として選出されるも、昨年に離党し、現在は「人民さきがけ党(PPP)」の党首を務めるテ・テ・カイン(Thet Thet Khine)氏(53)もNLDの運営に批判的な見方を示している。

 同氏は、党内では能力よりも忠誠心が評価され、細かいことまで上層部が干渉し、「ザ・レディー」と呼ばれるスー・チー氏に対して誰もが腫れ物に触るように接していると主張。「NLDの運営方法は秩序を欠き、非常に独裁的だ」と述べる。

 少数民族が多数派を占める多くの地域ではNLD離れが広がったが、NLDは主要民族ビルマ(Bamar)が多い地域では盤石な支持基盤を誇っている。

 公の場で自分の意見を言えば、自身も親族もネット上でバッシングを受けるとカイン氏は言う。

「NLDにはもはや、わが国の問題を解決する道は示せない」

 NLDは、1988年に起こった軍政に反対する民主化運動から発生した。

 現在75歳になったスー・チー氏への支持が高まったのはこの時だった。国家的英雄となったスー・チー氏は、15年間の自宅軟禁に置かれた。政治的思想のために拘束された約1万人のうちの1人だ。