【11月8日 AFP】タイ・バンコクの人けのない建設途中の高速道路を、ノンラック・チャイリティチャイ(Nongluck Chairuettichai)さん(63)は滑走する。ロングスケートボードのタイ代表最年長メンバーもある彼女は、スケートボードを始めたことが、乳がんから回復する道に自身を立たせてくれたと話す。

 ノンラックさんは10年前、乳がんと診断された。手術と化学療法を受け、体は痩せ細った。

 AFPの取材に応じたノンラックさんは「毎日スケートボードをすると、体がより強く、より健康になるのを感じることができます。(中略)これが回復を実に助けてくれました」と語った。そして「最も重要なことは、楽しいことです」と話し、にこっと笑った。

 ノンラックさんがボードを手にしたのは、公園で息子のソーティーラさんがボードを乗りこなしているのを見たことがきっかけだ。好奇心からだった。2人の子どもの母親でもあるノンラックさんは、このスポーツに「やみつき」になったと言う。

 ノンラックさんはすぐ、ロングスケートボードのコミュニティーで有名になった。わずか数か月でトーナメントにも出場。昨年にはタイ代表チームの資格を獲得し、史上最年長のメンバーとなった。

 代表チームのアピチャート・ラットニン(Apichat Rutnin)監督はAFPに「彼女は多くの人、特に女子に刺激を与えています」と語った。「今では、若者から大人まで、より多くの女性がボードを使ったスポーツに参加し始めています」

 トーナメントでは、ノンラックさんはタイム記録を破ることに力を入れていない。目標は心の安らぎにある。

「私は自分の幸せのために滑ります。(中略)それがすべて、それで十分です」 (c)AFP/Dene-Hern CHEN