【11月3日 People’s Daily】壁に描かれた巨大なアート、伝統家屋を生かした小粋なバーなど、竹細工を体験できる手芸館。中国浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)葛家村は「芸術による村おこし」で知られている。村は都市部から離れているが、「酒が香れば路地裏もかまわず(商品が良ければ宣伝しなくとも客が求めに来る)」というように、各地から多くの若者や外国人がこの静かな集落に訪れている。

 葛家村の取り組みは当初、中国人民大学(Renmin University Of China)の叢志強(Cong Zhiqiang)副教授らのチームにより始まった。農村の振興発展プランに芸術を取り入れると、村民たちが自ら活動を始めた。叢氏は「私たちが実行したことは決して多くはない。きっかけを与えただけで、あとは村民が本来の創造力と積極性を発揮した」と振り返る。

 農村の活性化は、「幹部が実行し、村民が従う」という上意下達の方式でなく、村民の自主性を呼び起こすことが最大のかぎだ。

 江西省(Jiangxi)宜春市(Yichun)万載県(Wanzai)黄源村では、地酒による村おこしが活発になっている。当初、村の第1書記として赴任した劉永(Liu Yong)氏が、昔ながらの方法で地酒を醸造することを奨励した。ただ、応じる村民は極めて少なかった。そこで劉氏は自費で村民の地酒を大量に購入。江西省の観光イベントで販売すると、一杯残らず売り切れた。その人気ぶりを知った村民たちが次第に地酒の醸造に取り組むようになり、今や「黄源地酒」はブランドとして成長。村落に富をもたらす「黄金の水」となった。価値観を変えるきっかけさえあれば、村民は「内なる力」を発揮し、自ら富を引き寄せることができる好例だ。

 先駆者が広い地域で経験を共有することも、村おこしにとって重要だ。アートによる村おこしに成功した葛家村の住民は今、貴州省(Guizhou)の村落で支援活動をしている。地域固有の特色を生かした村おこしを指導する一方、貴州省の刺しゅうや木工品、醸造酒などを葛家村に持ち帰り、さらなる芸術空間の創出に励んでいる。こうした交流は、両方の村にメリットをもたらしている。

 村民の積極性、主体性、創造性を呼び起こし、村民が自ら実践していく。葛家村と黄源村の村おこしは、多種多様な農村の活性化が可能であることを教えている。(c)People's Daily/AFPBB News