【10月30日 AFP】人間が自然界との付き合い方を変えない限り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)よりも多くの死者を出し、世界経済に深刻な悪影響を及ぼすパンデミック(世界的な大流行)が頻発するようになると、国連(UN)の専門家組織が29日、警告を発した。

「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」の特別報告によると、新型コロナウイルスのように動物を宿主とし、ヒト感染の恐れのあるウイルスは現在、最大85万種が存在する。

 生物多様性とパンデミックに関する特別報告書の執筆者らは、動物たちの生息地が破壊され、消費活動が拡大を続けていけば、動物由来の感染症のヒト感染が発生する確率は今後、これまでよりずっと高まると指摘。パンデミックは人類の「存続に関わる脅威」を表していると述べている。

 感染症予防に取り組む国際NPO「エコヘルス・アライアンス(Ecohealth Alliance)」の代表で、特別報告書を作成したIPBES専門家ワークショップを取りまとめたピーター・ダザック(Peter Daszak)氏は、「気候変動と生物多様性の損失を引き起こす人間活動が、農業への影響を介してパンデミック発生の危険性をもたらす」と語った。

 IPBESはCOVID-19について、1918年のインフルエンザ(いわゆるスペイン風邪)大流行から数えて6つ目のパンデミックだとした上で、その全ては「完全に人間の活動が引き起こしたものだ」と指摘した。

 こうした人間活動には森林伐採や農地開拓、野生生物の取引と消費といった持続可能でない開発が含まれ、いずれも動物と人間との濃厚接触の機会を増やし、動物の保有する病気と人間との距離を縮めることにつながっている。

 IPBESは、毎年5つ前後の新たな感染症がヒト間で発生し、そのどれもがパンデミックに発展する可能性があると警鐘を鳴らしている。

 第一線の専門家22人が参加してリモート形式で開催されたIPBES専門家ワークショップでは、パンデミック再発リスクを低減するため各国政府が取れる対策も取りまとめられた。

 専門家らは、COVID-19の経済的損失は今年7月時点で最大16兆ドル(約1670兆円)に上ると試算した上で、将来的なパンデミックを予防する対策を講じる方が、パンデミック発生後に対処するより100倍も経費を節減できるとし、これは「社会変革に向けた強力な経済的動機となる」との見解を示した。(c)AFP/Patrick GALEY