【10月30日 AFP】現代の犬に見られる多様性の多くは、最終氷期が終わった1万1000年前ごろには既に存在していたとするゲノム研究の結果が、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。人類の友となった犬が、どのようにして飼い主と共に世界中に広がっていったかを示す研究だ。一方、人間と犬の歴史が寄り添っていない興味深い時期があったことも分かった。

 英フランシス・クリック研究所(Francis Crick Institute)を中心とする国際研究チームは、欧州、中近東、シベリア(Siberia)各地で見つかった古代犬27匹分の骨からDNAを抽出し、ゲノム配列を解析した。このうち最古のDNAは、1万1000年前に生息していた犬のものだ。

 すると、どの動物が家畜化されるよりもかなり早く、1万1000年前までには遺伝的特徴のはっきり異なる犬の血統が少なくとも5つ存在していたことが明らかになった。

「現在、街中で見かける犬の多様性の幾つかは、氷河時代にその起源がある」と、論文の上席著者を務めたフランシス・クリック研究所・古代ゲノム研究室のポンタス・スコグルンド(Pontus Skoglund)氏は語る。「氷河時代が終わる頃には、犬はもう北半球全体に広がっていた」

 今回の研究結果は、犬の祖先が「単一起源」のオオカミだったという説を裏付けている。研究チームは、恐らく全ての犬が「単一の絶滅した古代オオカミの個体群」を共通の祖先としていることを発見した。

 犬と人類の進化の過程は、時によく似た変遷をたどってきた。例えば、人間はでんぷんの消化を助ける唾液アミラーゼという消化酵素を作り出す遺伝子の数が、チンパンジーより多い。論文によると、古代犬もこの遺伝子をオオカミより多く保有し、犬が農耕文化の食生活に適応するにつれて、その傾向は高まる一方だった。

 また、人類と犬の歴史が平行して展開していない時期もあった。かつて欧州には多様な犬種が存在したが、侵入種1種が広がったことで多様性は失われた。だが、これは人類の移動とは無関係に起きたことだ。

 論文の筆頭著者のアンデシュ・ベリストローム(Anders Bergstrom)氏は、「犬の歴史を理解することは、犬だけでなくわれわれ自身の歴史を学ぶことでもある」と述べた。(c)AFP/Issam AHMED