【10月29日 AFP】(更新、写真追加)フランス南部ニース(Nice)にある教会で29日朝、刃物を持った男が市民を襲撃した。警察筋によると3人が死亡したという。被害者の1人は喉を切り裂かれ、複数人が負傷したとされる。検察当局は、テロ事件としての捜査を開始したと発表した。

 警察筋によると、襲撃犯は事件発生直後に拘束されたという。

 事件を受け、首都パリの議会では1分間の黙とうがささげられた。その後ジャン・カステックス(Jean Castex)首相ら閣僚は、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領との緊急会議に出席するため、足早に議場を後にした。

 ニースのクリスチャン・エストロジ(Christian Estrosi)市長は、「イスラム系のファシズム攻撃だ」と断じた。

 エストロジ市長は現場の報道陣に対し、「襲撃犯は『アラーアクバル(アラビア語で神は偉大なりの意)』と繰り返し叫んでいた」と明かし、逮捕時に負傷して手当てを受けている最中にも叫ぶのをやめなかったと述べた。

 同市長は、警戒のため国内各地の教会の警備増強または閉鎖を呼び掛けた。またマクロン大統領が間もなく同市入りすることも明らかにした。

 今回の事件発生の前には、授業でイスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の風刺画を見せた後に斬首されて死亡した教師のサミュエル・パティ(Samuel Paty)さんへの連帯心を示すため、仏全土で大規模な抗議活動が行われたばかり。

 パティさんの殺害を受けてマクロン大統領は、過激主義や暴力を増幅させる恐れのあるモスク(イスラム礼拝所)の閉鎖や組織の解体をはじめ、イスラム過激派の取り締まりの強化を約束した。

 しかし大統領のこの方針は、イスラム教徒との緊張激化を招き、イスラム教徒が不当な扱いを受けているとの非難が上がった。仏国内には、欧州で最多のイスラム教徒が暮らしており、その数は500万〜600万人と推定されている。

 アラブ諸国では、フランス製品の不買運動をはじめとする対仏抗議活動が広がり、またマクロン大統領とトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領との対立も強まっている。(c)AFP/Vincent-Xavier MORVAN with Sylvie MALIGORNE in Paris