【10月29日 AFP】地球の凍結した領域から大量の氷が消失することで、地球の気温がさらに0.4度上昇する可能性があるとする研究論文が27日、発表された。温暖化が「悪循環」に陥る危険性を浮き彫りにする研究結果だ。

 北極域の夏季の海氷面積は、1970年代末から10年に10%以上の割合で減少しており、山岳氷河からは過去100年の間に年間約2500億トンの氷が消失している。

 西南極氷床(West Antarctic Ice Sheet)とグリーンランド氷床(Greenland Ice Sheet)からの氷消失は加速しており、科学者らの間で最近まで最悪の融解シナリオと考えられていた事態をすでに上回るほどになっている。

 工業時代の始まり以降、化石燃料からの温室効果ガス排出によって、気温の上昇幅はすでに1度に達している。だが、今後、氷の消失でその上昇幅がどのくらい増大するかについての予測を試みる研究は、これまでほとんど行われていなかった。

 独ポツダム気候影響研究所(PIK)の研究チームは大気、海洋、海氷、陸氷のデータを含む気候モデルを用いて、さまざまな排出シナリオの下での氷消失による気温変化を予測した。

 その結果、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が現在の値(約400ppm)の場合、北極海氷、山岳氷河、極地の氷冠などの融解が、気温を0.4度上昇させることが明らかになった。

 現在の排出レベルが続くと1.5度の気温上昇がほぼ不可避となるが、これにさらに0.4度が上乗せされることになる。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」は、産業革命以前からの気温上昇を可能であれば1.5度以下にするとの目標を定めている。

■氷が消失するとなぜ気温が上昇?

 氷消失による気温上昇の主な要因は「アルベドフィードバック」として知られる作用によるものと考えられる。この作用は、熱を反射する輝く氷が、熱を吸収するより暗い色の海水や土壌に取って代わられることで起こる。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文で研究チームは、氷の後退に伴って気温を上昇させると考えられるその他の要因として、大気中の水蒸気の増加による温室効果の増大などを挙げている。

 西南極氷床、グリーンランド氷床といった最大級の氷塊は、現在の温室効果ガスの排出レベルが続いても、完全に融解するまでには何百年もかかるとみられている。だが研究チームは、気温がこれまでにないほど上昇する中、これらの巨大な氷塊が間もなく、再形成が不可能なポイントまで解ける危険性を強調している。(c)AFP/Patrick GALEY