【10月29日 AFP】麻薬密売や発砲事件、ネズミがはびこる空き家、そして絶望で荒廃した街は、11月の米大統領選で誰が勝ったとしても変わらないだろう──そう語るデーモン・レーン(Demon Lane)さん(27)は、米メリーランド州ボルティモア(Baltimore)市東部に住む。

 この地区は住民の圧倒的多数が黒人で、貧困が深刻であり、街並みは何十年も放置されて荒廃している。数キロ離れた、白人が圧倒的多数の富裕地区にある高価なマンション、真新しい商店や安全な通りとは際立って対照的だ。

 ボルティモアは人口の3分の2が黒人だが、人種による居住地区の違いが最も際立つ都市の一つだ。専門家らによると、ボルティモアに住む最貧困層のアフリカ系住民は、白人地区の最富裕層の人々に比べて平均寿命が約20年短い。

「過去3人の大統領では何も変わらなかった。だからこの次も変わらない」。レーンさんは妻と幼い子ども3人と住む集合住宅の玄関口で階段に座り、AFPの記者に語った。

 通りを挟んだ向こう側には、腰の高さにまでごみが積み上がっている。隣のブロックは、廃虚となった家屋が解体されて更地となり、ほとんどが雑草で覆われている。何年も衰退を続けてきたこの地区ではそのように廃虚となった建物が数千棟ある。

 道路を進み、空き家が並ぶブロックをさらにもう一つ過ぎると、そこはレーンさんが「クラック・セントラル」と呼ぶ違法薬物の取引場所だ。暖かい季節だと週に約3回は銃声が聞こえるとレーンさんはいう。「希望はない。唯一希望を持っているのは自分自身に対して、自分が家族のためにできることだけだ」