時計のデザインで人気の的が内部のメカニズムが見通せる〝オープン〞スタイル。ダイアルやケースバックを通して見える精巧なムーブメントとスケルトンで露わになった機構に心躍る!

独創的なメカをケースバックから鑑賞する愉悦

機械式の復活が本格化した1990年代に注目されたデザインがいわゆる「トランスパレントバック(またはシースルーバック)」と呼ばれるもの。裏蓋側に透明なクリスタルをセ ットして裏側からムーブメントを眺められるようにしたオープンスタイルだ。当初の目的は、搭載ムーブメントがクォーツでなく、「機械式」であることを表明する点にあったのは紛れもない事実。

その流れは急加速して、ケースバックは中を見せる窓から独自の設計による希少な機構や、美しい装飾仕上げを積極的に表現する舞台へと変貌した。今や時計の裏にもうひとつの「顔」をクリエイトしてオリジナリティを打ち出すことは不可欠。腕からはずしてつい裏を見たくなる、そんな欲望を掻き立てる演出が愛好家を魅了してやまないのだ。

MORITZ GROSSMANN(モリッツ・グロスマン)/ハマティック
ケースバックから見えるムーブメントでひときわ異彩を放つのが、19世紀のハンマー式巻き上げ機構から着想した振り子の自動巻き機構。しかも振り子自体がスケルトンで、独自の精巧なムーブメントがほぼ遮らずに見渡せる。2020年新作は、ダイアルには1875年の懐中時計に用いられたオリジナルのロゴも採用し古典色を一段と付与する。ホワイトゴールド、ケース直 径41㎜、3気圧防水。世界限定25本。税別570万円。

OMEGA(オメガ)/スピードマスター ムーン ウォッチ 321 ステンレススティール
1969年にアポロ11号の宇宙飛行士たちが人類史上初の一歩を月面に刻んだ際に、彼らが装着していた「スピードマスター」に搭載されていた手巻きのクロノグラフムーブメントがキャリバー321。オメガは先端技術を駆使してその再構築に成功し2020年の新作に搭載。見どころはまさに裏から鑑賞できる新世代321だ。ステンレススティールケースも1965年の第3世代から着想。ケース直径39.7㎜、50m防水。税別151万円。

F.P.JOURNE(F.P.ジュルヌ)/クロノメーター・レゾナンス
時計の調速機能を担うテンプを2個配置し、その共振現象を生かして同調を図るという、独創的な複雑機構を搭載した傑作の誕生20周年を祝う最新の進化バージョン。ローズゴールドを採用した圧巻のムーブメントでは、左右対称の設計を通じて2つのテンプの共振を目にすることができる。ダイアルは右に12時間、左に24時間表示を置く。手巻き。ローズゴールド、ケース直径42㎜、30m防水。税別1216万8000円。

ZENITH(ゼニス)/デファイ エル・プリメロ21 ウルトラヴァイオレット
ゼニスは、1/100秒を計測できる革命的なクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ 21」を初めてヴァイオレットで彩った。表からはグレーのクロノグラフインダイアルを備えたオープンダイアルを通じて、裏からは同じくヴァイオレットをまとう星形のローターを通じてムーブメントが見え、今までにない新鮮な色彩感覚が楽しめる。自動巻き。チタン、ケース直径44㎜、10気圧防水。税別142万円。

時計ジャーナリスト・菅原 茂はこう見た!

見えないより見えたほうが楽しいに違いないが、スタンダードな量産型ムーブメントの場合、似たり寄ったりの眺めに少々残念感もあるのは事実。比類なき独創性を鑑賞したいところだが、そんな願いを叶えるのはF.P.ジュルヌの諸作だ。唯一無二の機構をもつ自社ムーブメントの素材も、なんと18Kローズゴールド製。裏が凄いどころか凄すぎる!

ENGINE編集部・前田清輝はこう見た!

トランスパレントバックは、ひと目でムーブメント全体が確認できるローター(回転錘) の無い手巻きが好み。しかし、ゼニスのデファイ エル・プリメロ21は自慢のハイビート・ムーブメントを見せるべくローターをスケルトン化し、さらにはこの色! ダイアル側と同じくらい見せることを意識したデザインは、素直にカッコイイ!!

文=菅原 茂(時計ジャーナリスト)/前田清輝(ENGINE編集部シニア・エディター)
(ENGINE2020年11月号)