【10月23日 AFP】米大統領選を12日後に控え、共和党のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領(74)と民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領(77)は22日、テネシー州ナッシュビル(Nashville)で最後のテレビ討論会に臨み、互いの汚職疑惑や新型コロナウイルス対応について激しい応酬を交わした。世論調査で劣勢のトランプ氏にとっては形勢を逆転する最後の大きなチャンスとみられていたが、両者とも相手に決定的な打撃を与えることはできなかった。

 今回の討論会で最も驚くべき点は、トランプ氏が終始バイデン氏を怒鳴りつけ泥仕合と化した先月の第1回討論会と比較して、おおむね礼節が保たれていたことだろう。今回トランプ氏は、「ジョー」とバイデン氏に呼び掛け、討論の秩序を維持するため両者のマイクを切るスイッチを握っていたNBCニュースの司会者クリステン・ウェルカー(Kristen Welker)氏の対応を称賛さえした。

■汚職疑惑

 討論会の前半では、互いの汚職疑惑をめぐる討論が白熱した。トランプ氏は、バイデン氏が副大統領だった期間に息子のハンター(Hunter Biden)氏が中国とウクライナで汚職に関与していたとする疑惑を攻撃材料としているが、この疑惑には信ぴょう性が疑わしいとの指摘もある。

 トランプ氏は討論会の中で繰り返しこの話題に触れ、「有罪を免れない」疑惑があると主張。「米国民に説明する義務がある」とバイデン氏を激しく追及した。一方のバイデン氏は、自身の家族に不正行為は一切ないと述べ、トランプ氏自身にも中国に口座を保有している問題や米国での納税記録の公開を拒否したことなど、重大な疑念があると指摘。「分かっているのは、あなたが払うべき税金を払っていないか、少なすぎる額しか納めていないということだ」と反撃した。

■新型コロナ対応

 バイデン氏にとって最大の武器は、トランプ氏の新型コロナウイルス対応への批判だ。バイデン氏は視聴者に向けて「暗い冬」が来ると警告。「22万人の米国人が亡くなった」と述べ、「これほど多くの死者に対して責任を負う者が、米大統領職にとどまるべきではない」と糾弾した。

 これに対しトランプ氏は、医療専門家の警告をよそにできるだけ早期の経済活動再開を推進した自身の政策を擁護。「われわれは折り返し地点に来ている。角を曲がっているところだ。(ウイルスは)消えつつある」と強調。「ワクチンの準備はできている。数週間以内に発表される」と述べた。

■対北朝鮮関係

 両氏は、北朝鮮をめぐっても応酬を交わした。トランプ氏は、バラク・オバマ(Barack Obama)前大統領とバイデン氏が「混乱」と「核戦争」の脅威を残して去った後に、自分が金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)朝鮮労働党委員長と友好関係を築くことで朝鮮半島(Korean Peninsula)の平和を維持してきたと主張した。

 これを受けバイデン氏は、「トランプ氏の言う良い友達というのは、悪党だ」と応じ、「まるで(アドルフ・)ヒトラー(Adolf Hitler)が欧州を侵略する以前は、われわれはヒトラーと良好な関係を持っていたと主張するようなものだ」と一蹴した。(c)AFP/Eric Baradat with Sebastian Smith and Shaun Tandon in Washington