【10月24日 AFP】生まれつき両腕がないパキスタン人のムハンマド・イクラム(Muhammad Ikram)さん(32)は、スヌーカー(ビリヤードの一種)の台に近づき、次の一手を見極め、安定したあごの一振りでキューボールを突いて赤球をコーナーポケットに沈めた。

 イクラムさん自身、スヌーカーに情熱を注ぎ込むことになるとは思っていなかっただろう。しかし、イクラムさんは何年もスキルを磨き続け、今では地元のスヌーカー場の誰にでも勝負を挑めるようになった。

 イクラムさんは、パキスタン東部パンジャブ(Punjab)州の小さな町にあるスヌーカー場でAFPのインタビューに応じ、「必死に努力しなければならず、大変だ。もし他に僕のようなプレーヤーがいたら、対戦する準備はできている」と話した。

 貧しい家庭に生まれ、イクラムさんと8人のきょうだいは学校に行かず、子ども時代の大半を孤独に過ごした。

 10代になると、地元のスヌーカー場でプレーヤーらを見るようになり、これがきっかけで、「秘密で」スヌーカーの練習を始めた。

「初めは何もないスヌーカー台の上で、1人でボールを押していた」が、「だんだんと上達してきて、他の人とプレーするようになった」と語るイクラムさんは、今では町のトッププレーヤーらとも対戦できる。

 イクラムさんはさまざまなショットを披露した。しっかりした頭の振りで赤球をポケットに落とし、次いでさまざまなカラーボールを沈めていく。他のプレーヤーらから拍手が湧き起こる。

 イクラムさんの両親は、けがを心配し、最初の数年はスヌーカーを禁止していたが、昨年になってプレーを許した。