【10月21日 AFP】インドは新型コロナウイルスの累計感染者数で、今にも世界のトップに立とうとしている。だが、マハラシュトラ(Maharashtra)州では工場が忙しく稼働し、コルカタでは市場に人がへし合い、人々は仕事に戻っている。祭りの季節を前に、人々は新型ウイルスの大流行を忘れたがっている。

 世界で2番目に人口が多いインドでは3月、新型ウイルス感染抑止策として厳格なロックダウン(都市封鎖)が実施されると、数百万人が飢餓寸前の状況に追いやられた。このため政府と人々は、前に進んで生きていかなければと決めたのだった。

 国際通貨基金(IMF)は、インドの国内総生産(GDP)成長率が今年、マイナス10.3%になると予測している。主要新興国の中で最も落ち込みが大きく、1947年の独立以来最悪の水準でもある。

 ロックダウンで、非公式経済就業者数百万人がほぼ一夜にして職を失い、収入を失い、人災といえる状況に陥った。

 コルカタのニューマーケット(New Market)は、祭りの季節を前に大勢の客でにぎわっていたが、多くの人はマスクを着けていなかった。買い物をしていたガルギ・ムカジー(Gargi Mukherjee)さんは、誰もあんな状態に戻りたくないと語る。「生きていくためには皆、外へ出て、仕事をしなければならない。稼がなければ、家族を養えない」

 10月から11月にかけてインドでは、「ドゥルガー・プージャ(Durga Puja)」「ダシャラー(Dussehra)」「ディワリ(Diwali)」といったヒンズー教の祭りが相次いで開催される。市場は、高額商品を安く買おうとする人々で大にぎわいとなるため、新型ウイルスの感染急増を引き起こす可能性があると専門家らは警告している。

 だが、主婦のティヤス・バッタチャルヤ・ダス(Tiyas Bhattacharya Das)さん(25)は、「もちろんコロナは怖いが、私にできることはない」「ドゥルガー・プージャは年に1度しか来ないので、楽しい買い物を逃すわけにはいかない」と話す。

 ムンバイに拠点を置く格付け会社インディア・レーティング・アンド・リサーチ(India Ratings and Research agency)の首席エコノミスト、スニル・クマール・シンハ(Sunil Kumar Sinha)氏は、インド人は厳しい選択に直面していると指摘する。「飢え死にするか、ひょっとしたら死ぬかもしれないウイルスに感染するというリスクのどちらかを選ばなければならない」

 インドでは700万人以上が感染したが、死亡者はその約1.5%にとどまっており、人口密度が高く衛生状態が劣悪で、公立病院が崩壊寸前のインドでは新型ウイルスによって都市が荒廃すると警告していた多くの人々を驚かせている。

 コルカタで書店を営むプレム・プラカシュ(Prem Prakash)さん(67)は、哲学的な考えをAFPに語った。

「運命に託さなければならないこともある」「死を恐れすぎることは解決策にはならない。死が訪れたら、潔く受け入れるべきだ」

 映像はコルカタなどでの通勤や市場の様子と、ヒンズー教の祭りの準備をする人々。15、16、18日撮影。(c)AFP/Ammu KANNAMPILLY with Satyajit SHAW in Kolkata